隣よりも近く

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 手づかみもまだ上手にできないので、口に入りそこねた野菜やウインナーやお米たちが、ぼろぼろと服と床にこぼれていき、そしてそれらはたっちゃんのひじや足でつぶされていくのだった。  私は“いただきます”をさせるのは諦めて、たっちゃんが使わなかったスプーンで脇からごはんをすくい、あげる。たっちゃんはスプーンに気づくとあーんと口を開けて、まるでヒナのよう。  「あー」  「あ、ごめん遅かったね。はい、あーん」  食べる様子に見入っていたら、たっちゃんに次を催促され、あわててすくって差し出した。ぱく…もぐもぐ、ぱく…もぐもぐ、ぱく…もぐもぐ……  あと少しで完食、というところでたっちゃんは立ち上がり、イスから出ようとしだした。 「こらこら、立ち上がったらあぶないよ。ごちそうさまなの?」  たっちゃんは今度は両手をあわせた。  動きまわるたっちゃんの両手と顔をとりあえずぬぐって床に下ろすと、たっちゃんはタタタとおもちゃ箱へ一目散にかけていったので、私はやれやれと息をついて台所へ向かった。  コンロのお鍋から、自分のお椀にすっかり冷めたスープよそる。温めなおしても良いのだけれど、まあいいや。お椀とお箸とともに、席に着く。  ふうー…。  身体の力が息とともにふうっと抜ける。手を合わせてからスープをすすると、お腹が減っていたのでおいしい。具も柔らかく煮えてる。     
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