隣の案内人

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そこには、女の子座りでパソコンを見ている髪の長い細身の女性がいて、ホラー映画でも見ているのか、パソコン画面に惨たらしい殺害映像が流れていた。 テーブルの上には、小さな青色の小瓶がいくつか並んでいた。 女の髪は梳かしていないのか、ボサボサでまとまりがない様子だった。 女は笑っているのか、肩を上下に揺らしていた。 個室は綺麗に片付いてはいるが、壁際には大きなバッグが置かれ、開いた口からロープのようなものが顔を出していた。 俺はごくりと生唾を飲み込んだ。 その時、揺らした肩がピタリと止まり、俺の方に振り返ろうとした。 目が合ったらやばいと直感した俺は、とっさに顔を引っ込めた。 「私は死ぬ気はありません」 そう書くと、俺はそっと隣の個室に紙切れを落とした。 壁の向こうで、舌打ちが聞こえた気がした。 だが、それ以降隣の女から紙切れが投げ込まれることはなかった。
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