隣の案内人

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深夜一時を過ぎて、朝まで眠ろうと横になった。 今まで聞こえていたイビキもなくなり、これでよく眠れると思っていた。 横になって少しするとドアの隙間から、何故か冷たい風が吹き込んできた。 店内には暖房がついていたはずなのに。 きっと夜が更けてさらに気温が下がったのだと、俺は個室にあった毛布に包まった。 すると、どこからか軋むような音と共に、低い唸り声が俺の頭上から聞こえてきた。 俺はあのサイトのことを思い出していた。 「ヨミオクリ」をするということは、ここで誰かが自殺をしたということ。 それを思うと、途端にさっきとは別の寒気がしてきた。 とにかく、朝まで我慢しよう。 そう思い、俺は毛布に顔をうずめたまま目を閉じた。 軋む音も唸り声も、いつまでも聞こえた。 ポタリポタリとまるで雨漏りのように水が滴る音が、俺の背中の方から聞こえた。 息苦しく悶えるような声と、引きつるような呼吸が足元の方から聞こえた。 次第に血生臭い香りが漂い、俺は我慢が出来ずに起き上がる。 声は一瞬で消え失せ、個室には俺しかいない。 だが、胸焼けのような吐き気に襲われ、俺は個室を這うように出た。
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