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扉を叩く音がした。びくっと肩が跳ねる。
息を殺していると、もう一度扉を叩く音が聞こえた。トントンとやってからまた間を置いて、トントン。規則的なリズム。「すみませーん」と呼ぶ声までし始めた。
「は……はい」
大きな声でしようとした返事を途中から抑える。立ち上がり、恐る恐る扉を開けると色白で眼鏡をかけ、痩せた男が立っていた。
「あ、こんにちは。隣に越してきた者です。ご挨拶に伺いました」
「は?はあ……」
ぺこりとお辞儀する男に驚き、面食らう。今時引っ越しの挨拶なんてかなり珍しい。それもこんな所にまで。
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