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 もうすぐ卒業だから、クラスみんなで席替えをした。 「せっかくだから、いままで接点が無かった人と話す機会を作ろう」  なんて誰かが言い出して、くじ引きしたのにあたしの前後左右が女だよ。  もう女に接点なんか無くていいのに!  普段から接点ありまくりのメンツだから電気流せば超電導ってくらいスムースに話ができる奴ばかりで、席替えの意味が何もないよ。 「とほほほほ。最後まで灰色の高校生活かあ」  思わず口から愚痴がこぼれる。  最後なんだし、どうせなら隣の席は男の子がよかった。   「席替えの何気ない出会いから、燃え上がるような恋に落ちたい!」  なんて後ろの友人と大声で話していたら、視界に影がスッと落ちる。  あれぇ? と思って顔を上げたら、なんか不機嫌そうな顔の男の子が立っていた。  えーと、こいつ誰だっけ?  同じクラスの松下……透とか言ったかな。  あんま話した事ないし、そもそも仲のいい男の子なんかいないからよく分からないけど、どうしてこいつはそんな顔してるのやら。 「なんだよ。お前、彼氏が欲しかったのか?」 「そーよ。かっこいい男の子と素敵な恋がしたいの!」 「ほら、あたしってよく見ればけっこう可愛いし、性格だっていいじゃん? スタイルだってまあまあだし、どうして彼氏ができないのか不思議よね?」  言ってる途中から自分でも恥ずかしくなった。  こっちの話を黙って聞いていた松下はムッツリした顔のまま、あたしの隣を指さした。 「じゃあ、俺がそこ、座ろうか?」 「うぇえ?」  思わずへんな声が出た。たぶん変な顔もしてた。  そしたら松下ったら大きなため息。 「だろ? みんな我慢してるんだから、お前も我慢しろよ」  そう言って彼は斜め後ろの席に座る。  なにあれ、ムカつく!  ちょっとした願望に、どうしてケチつけるかな。  そのあと授業が始まっても、あたしはぶんむくれていた。  みんな我慢してるんだからとか、偉そうに言わないで欲しいな。  じゃあ松下は我慢してるのかよ?  ホント、もう。  何が『俺が座ろうか?』だ。  あたしは出会いが欲しいんだっちゅーに。    あたしの隣に座りたいとか、ふざけてる。  あんたは、あたしと付き合いたいのか?  …………え? 「そうなの?」  ビックリしすぎて思わず突然奇声をあげて立ち上がってしまった。  恐る恐る斜め後ろを振り返ると教室中の視線があたしに集まっている中で、松下だけが真っ赤になって恥ずかしそうに目を逸らしている。  マジで?  そんな分かりにくい告白、やめてよ。  これじゃあたし、断ったことになってるよね?  松下のことよく知らないし、今すぐ付き合おうってつもりもないけど。  でも照れてる松下はかわいいし、そんなイヤじゃないんだよ。  えーと、だから、えーと。  どうしよう?  考えてたって仕方ない。ここは勇気を出すとこだ。  とりあえず。なにはともあれ、これだけは言わなきゃ。  あたしは座るのも忘れ、なけなしの勇気を振り絞って真後ろの友人に声をかけた。 「……ねえ、あたしと席、交換して?」
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