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『今から帰る』
簡易通話アプリのアイコンと共に、そんな簡素なメッセージが画面に浮かび上がっていた。
メッセージをタップしてアプリを起動し、しばし返信内容を考える。
『飯、食ってくるんじゃなかったっけ』
語尾に(笑)でもつけてやろうかと思ったけど、茶化したら後が怖いので止めておいた。
返信にはすぐに既読がついて、こちらがアプリを閉じる前にメッセージが飛んできた。
『ロクに食えなかった。帰ったら何か食う』
何か食う、つまり、何か作っておけよ、という無言の圧力を感じる。
しょうがないなあと思いつつも、パソコンを閉じて台所へと向かった。
あの後、『家に着くまであと十分』というご丁寧な時間制限まで設けられ、急いでメニューを思案する羽目になってしまった。
「簡単で腹いっぱいになるものか……」
この時間帯に炭水化物はどうかと一瞬躊躇したけど、ロクに食えなかったと嘆いたところを見ると、相当腹が減っていると考えられる。
「よし、決まった」
乾物の棚から常備しているパスタを取り出した。
大き目の深手フライパンに水を張って、コンロの上に乗せる。
塩を適量入れて、点火。
お湯が沸くまでの間に、冷凍庫からシーフードミックスとラップで小分けして冷凍していた茹で小松菜を取り出す。
シーフードミックスは、海水くらいの塩水にしばらく漬けておく。そうすると身がぷりっと仕上がるという。
凍ったままの小松菜はラップをしたままパスタの側に置いておく。
さて、お湯が沸くまでもう少しかかるから、副菜を作ろう。
大根はいちょう切り、きゅうりは斜め薄切り、人参は皮をむいて千切りを少々用意。
全部を塩ひとつまみで揉んで、しばらく置いた後に、昆布茶を小さじ一杯半から二杯、お酢を大さじ一杯くらいでよく混ぜる。
味見をして、丁度よければ、上にラップと重しをして(重しは茶碗をひっくり返したやつ)そのまま冷蔵庫へ入れる。
そうこうしている内にお湯が沸いてきたので、目分量でパスタを投入。一掴みだと大体百五十から二百グラムくらいの量になるようだ。
少し多めだけど、まあいいだろう。
そこにラップをはがした冷凍小松菜を一緒に入れたら、蓋をして火を止める。
通常の茹で時間より多めに時間はかかるけど、火を消しても茹であがるからガス代の節約になるのだ。
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