神の在り方、人の生き方

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 千古因り本国に語り継がれし神と云うのは、絶頂の存在に在らず、唯一無二の存在に在らず、津々浦々草や虫や陶器にまで宿り、一々人を教訓で呪縛せず、氣ままに暮らし、人々にも氣ままに暮らさせる姿勢をしているが故に尊い。畏怖と敬愛の対象という点に於いて唯一神とは似ておれど、無闇に正義を説かない所が違う。  人間万あれば万通りの正義有るが道理であり、少し考えれば分かることの様な氣もするが、頑なに絶対的価値観を盲信し、振りかざす者も居る。彼らの主張は天命に寄るものだと自認しているから、寸分の誤りも認めない。甚だ厄介極まりない。こういう者は特定の信者のみに留まらず、尋常人中にも少なからず生息している。  人間は考える事をやめると、どんどん人間として腐敗していく。新しい物と古い物とを整理する事が出来なくなっていく。積年の埃の溜まった心の部屋はさぞ息苦しかろ。けれどそれに慣れてしまうと、己の奇なるさえも氣づかなくなる。よく老人が懐古して現代を批判するが、それはまったく心すらも老いて内側から腐っていっている証拠である。昔の良い物も悪い物も代謝せずに発酵させている。こうなるともう、後は人間的成長は望めない。ただ死を待つばかりの宵人と化す。
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