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第1章 友達になろう
「あのさ、俺と友達になってよ」
「…え?」
これが、僕と春野春の初めての会話だった。
桜の花びらが散る、春―。
高校生達の楽しそうな声が、校門を駆け抜けていく。
「ねぇ、クラス何組だったー?」
「3組!」
「うそ、また一緒ー!」
女子達の楽しそうな会話。
あー…鬱陶しいな。
僕は、あの楽しそうな黄色い声が大っ嫌いだ。聞いているだけで虫唾が走るし、どんどん、胸が苦しくなって、息が吸えなくなっていく。
楽しそうな声が、陽炎みたいにゆらゆら揺れて見えて、全部が全部僕にまとわりついてくるみたいだった。
そのまとわりついたものが、僕の首を絞めてくるんだ。
お前なんかいらない
消えろ
消えろって。
「お前佐倉さんと同じクラスじゃん!いーなー!」
「んな事言ってる暇あったら勉強しろっつーの!」
ハハハ!!!
…。
うるさい…。
黙ってくれよ。
苦しい…くるしい…息が…
「大丈夫?」
ぐらりと揺れる僕の視界を、弱々しい力が支えた。
「…佐倉さん」
彼女は僕を見ていた。
見透かすような透き通った綺麗な瞳で…僕を、見ていた。
「苦しそう、大丈夫?保健室行く?」
「…っ」
彼女の伸ばされたその手をつかみかけて、止めた。
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