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借りた100円の行方
翌日私は朝一で、社内スケジューラーの三時から四時を非公開の予定で埋めた。借りた物を返すという、仕事よりも大事なタスクが存在するからだ。
時刻にしてピッタリ三時を迎える。スケジューラーのアラームが予定を告げる。
私は100円玉を握り締めると、意を決してコンビニへ向かった。
しかしレジに、彼の姿は無かった。品出しをしているのだろうかと通路を覗くが、やはり姿が見えない。
仕方なしに他の店員に聞いてみる事にする。
「あの、以前大学生位の男性の店員さんがいませんでしたか?」
彼の代わりにレジに立つ若い女性は、キョトンとした顔をした。しかし彼女も私の顔を覚えていたのか、ああ、と事情を察し話してくれた。
「昨日辞めてしまいました」
「ええっ…辞めた?」
「春休みも終わるし、これから卒論で忙しくなるからって。昨日までの契約だったんです」
彼女の返答に私は肩を落とした。
何という事だろう。私は彼に100円を返し、信頼を回復する機会を失ってしまったのだ。
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