それは、知る人ぞ知る彼の不思議な習慣

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カップに注ぐとふわり、とリンゴのいい香りが広がる。アップルティーだ。まもなくして宏輔がふたりで食べるにはいささか多すぎるポテトチップスを運んできたので並んでソファーに座る。 「こうちゃんは、なんでポテチを揚げたくなるの」 宏輔が長いこと考え事をしていていると思っていたら突然ポテトチップスを作り始めた、ということはこれまでにも何度かあった。その場面に出くわしたことのある他の親しい友人たちは、何を言うでもなくただ食べる役に徹していた。理由を知っていたからなのか聞けなかったのか。本当のところは分からないが、皆が黙っているから、触れてはいけないように思えてなかなか聞けずにいたのだ。 たった一言尋ねてみれば分かるはずのことをずっと聞けずにいた。これで宏輔の1番近くにいるつもりなのかと何度も自問自答したけれど、なんとなく出来ないこと、というのは案外克服するのが難しい。 だから今回もまた”あれ”をやっているなと気付くと、何も聞かずに手伝いに徹していたのだが、こうしてふたりきりで並んでいる今なら話してくれるのではないかと、ふと思ったのだった。 なんとなく、がいつのまにか消え去っていた。 ずっと聞いてみたかったこと。それでも何でもないことのように言葉にできていただろうか。少し心配になるくらいの沈黙の後、彼は探り探りと言った様子で口を開いた。 「綺麗に薄く切っていくのが落ち着くから、かな」 「なんだかA型っぽい」 「悪かったな。細かくて」 「別に、悪いなんて言ってないよ」 「悩み事も薄く切って、揚げて、食べちゃえばすっきりするかなって。そんな感じかも」 一度手をつけると、どうしても次々口に運んでしまう。いたってシンプルなこのお菓子には中毒性がある。初めて彼の妙な習慣について話をしつつも、しっかりと出来立ての美味しさを堪能する。 「こんなにおいしいなら、悩みごとも悪くないかなって思えるかもね」 「菜央が一緒に食べてくれるから、悩みも半分ですむしね」 これからもずっと一緒に食べられるのだろうか。ふとそんなことを考えてしまった。 急に隣同士で座っていることにむずがゆさを覚えてわざと茶化してみる。 「半分こしてもまだ50枚もあるよ」 「たしかに。完璧にカロリーオーバーだな」
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