第3章 彩矢の危機

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第3章 彩矢の危機

「パパ、起きてよ、遅刻しちゃう」 昨日の疲れなのか、なかなか父は起きない、父の布団を取り上げると、文句を言いながら起きてきた。 「この時間に行かなくても間に合うんだろ?」 「この時間がいいの。早く支度して」 いつも家を出る時間に出れそうだったが、家をでる間際に免許証を持っていない事に気づいた父は自分の部屋にとりにいったが、なかなか戻ってこない 私は玄関から 「パパ」と大きな声を出す。 すると父が 「すまんすまん、昨日の服に入りっぱなしだったよ」 「もう、いつもの電車間に合わないよ」 「次の電車でも間に合うんだろ。」 「まあいいや、じゃあ行こう」 そして、慌ただしく車に乗り駅まで送ってもらう。 いつもなら、車を降りると急いでホームに向かうのだが、今日は駅の近くのコンビニでパンを買ってからホームに向かい1本遅い電車に乗った。 学校のある駅に着くと、スクールバスの乗り場に急いだが、いつも乗るスクールバスは、出発していたので、次のスクールバスの乗る。 私の横には上級生が同席している。スクールバスの出発する間際に1人駆け込んで乗り込む生徒がいた。その生徒は彩矢だった。 彩矢は一番前の席に座りバスは出発した。 私の気のせいか彩矢の顔に元気が無かったような気がしたので、LINEを送る (おはよう。私も寝坊して同じバスにいるよ) すると少し経ってから (本当?私も寝坊しちゃった) (彩矢、顔色悪かったけど、大丈夫?) (顔はいつも悪いよ) (顔色 か・お・い・ろ だよ) (そんな事無いよ。今日は化粧ののりが悪くて) (おばさんか) (明日香ありがとう) いつもの彩矢らしくない返信を見て、私は異常に気づく。 スクールバスが学校に着くと、彩矢の所に向かう。 「彩矢」 「おはよう。どうしたの明日香、そんな焦って」 「何かあったの?」 「どうして」 「今日の彩矢おかしいから」 「考えすぎだよ」 すると彩矢の心の声が聞こえる (助けて、明日香) 会話が途切れそうになったが、心の声を聞いた私は、彩矢に話し掛ける 「じゃあ 今日帰り買い物付き合ってくれる?」 特に買う物は無かったが、彩矢との時間を取りたかった。 「ごめん。今日は彼氏と待ち合わせしていて」 「そうなの?じゃあ、お昼を外で一緒に食べよう。」 「うん」 また心の声が聞こえる (明日香を巻き込んではダメ) そして、昼休み いつもは彩矢が私の所に来るのだが、今日は私が彩矢の所に行く 「彩矢、行こう」 二人は外の校庭横にあるベンチに座って、昼食を食べ始めた 「彩矢」 「なに?」 「今日は何か、おかしいよ。悩みがあるようだったら相談に乗るよ」 彩矢は目を逸らしながら 「本当に悩みなんて無いよ」 少し動揺しているように見えるが、打ち明けて来ない。 私は彩矢の顔に近づき 「ちゃんと私の目を見て言って」 すると彩矢の瞳が涙で溢れる。 「明日香ちゃんに迷惑かけたく無いの」 と立ち上がり、その場から去ろうとした彩矢の手を掴み 「彩矢 私達友達でしょ。迷惑が掛かるより、相談してくれない方が悲しいよ」 彩矢は私に抱きつき、泣き始めた。いつも何があっても笑顔を振りまく彩矢がここまで思い詰めていたのかと思うと、ただ事では無い事だけは確かだ。 「今日は二人で早退しちゃおうか?」 彩矢は「うん」と頷いた。 彩矢は体調不良、私は家の用事を理由に早退した。 この時間はスクールバスが出ていないので、路線バスに乗って駅に着く。 スクールバスの発着する場所とは線路を挟んで反対側に足を運ぶ。 喫茶店と思ったが、彩矢が他の客に聞かれるのが嫌だと言って、いい場所があるからと駅を背に向け歩き始める。少し歩くと繁華街となっていて飲み屋等が立ち並ぶ、そこも通り過ぎると彩矢の足が止まった。 「ここよ」 「えっ ここってラブホテル?」 「うん。17時までは¥3,000なんだよ」 「いや値段の問題というか」 すると彩矢は私の手を引きラブホテルに入って行った。 ラブホテルに入ると部屋が映し出してあるモニターがあり、彩矢が明かりがついている部屋のボタンを押すと、横の受付窓口から部屋の鍵を受け取っていた。 (やけに慣れてるな)と変な関心をしてしまう。 「明日香、行こう」 2階の201号室なので、エレベーターに向かう。 私はドキドキが納まらない。 私達は2階に行き、201号室の鍵を開けて中に入って行った。 部屋に入ると、一人掛けの小さいソファーが小さいテーブルを挟んで二つ置いてあり、中央には大きなベッドが置いてある。 部屋の電気もやや薄暗く、いかにも如何わしい部屋であった。 「まだ13時30分だから、まだ3時間ぐらいあるね」 「うん」 二人は対面しているソファーに座る。 「冷蔵庫に入っているジュースはタダなんだよ。それにコーヒーもあるよ。明日香ちゃん何にする?」 「じゃあ コーヒー」 「分かった」 その時、心の声が聞こえた (明日香ちゃん、緊張してるな) しばらくして、コーヒーを煎れてテーブルにコーヒーが置かれた。 「彩矢 ありがとう」 すると彩矢は上着を脱ぎ始めた 私は驚き「あ 彩矢?」 彩矢はブラウスを脱ぎ、上半身はブラジャーだけになった。 「これを見て」彩矢は脇腹と背中を見せた 彩矢の脇腹と背中に数か所の内出血がある。 「これは?」 「欣也にやられたの」 欣也とは彩矢の彼氏である。 「どうして?」 彩矢は欣也との関係について話し始めた 「欣也と付き合って一か月ぐらい カラオケに行こうと言われて待ち合わせしたんだけど、ラブホテルの一室を借りた方が安いんだよと嘘をつかれてラブホテルに入った。 そのラブホテルはここよ 最初はカラオケをしていたんだけど、時間が経つと身体を求め始めてきて、まだ付き合って1か月で心の準備も出来ていなかった私は性行為を拒んだの。 でも欣也は、無理やり私を抱いてきた。もう犯されたと言っていいかも。 そして、欣也の家に通う生活が続き、恋愛に少しの憧れを持っていた私は、この生活にピリオドを打とうと別れを持ち出したんだけど、欣也はそれを拒んだ。 それからは、何かと暴力をふるう様になり、別れ話をする度に殴られた。」 私の目から涙が溢れだす 「ひ ひどいよ」 「うん。本当にひどい奴だよね。でも暴力に負けたくなかったから、別れ話を何度も言って、何度も殴られちゃった。 多分欣也は諦めていたんだと思う。 そして、金欲しさに援助交際を強要して、それを手切れ金にすると言ってきた。 勿論、拒み続け、DVを受ける。挙句の果てに裸を写メに取られて脅される。 もしここで、援助交際をしても、裸の写メがある以上、また要求するのは分かりきった事だから。 そして今日の18時に、欣也は援助交際の約束を取り、約束の場所に行くよう指示されたんだ。」 「だから元気無かったんだ」 「うん。さすがに誰にも相談できないし、自殺なで考えちゃった。」 私は自然と彩矢を抱きしめる 「絶対何とかするから」 「ありがとう」 そして二人は今後の事を考え始める。
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