第3章 彩矢の危機

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昨日の夜、マスターからの電話を受け、今まで起こった事がはっきりして清々しい気分に浸っていた。 大好きだった父が、僕の想っていたとおりの父であった事が何より嬉しかった。 そして今日は、母が入院している病院にいくため学校を休んだ。 病院の面会時間は15:00からだったので、午前中は家でのんびりしていた。 家にいる間に圭と壮太からLINEが入る 学校には入院した事を伝えたが、友達には入院した事は伝えず、母の具合が悪く休んだ事にした。圭も壮太も2人暮らしである事は知っていたので、特にこれ以上聞いてこなかった。 僕はお昼にインスタントラーメンを作り、それを食べてから13時に家を出る。そして電車に乗り病院を目指すが病院のある駅に着いたのは14時を過ぎていた。 病院のマイクロバスが30分間隔で駅に来るので、その発着場を探す。 病院のHPに発着場の場所が記載されているので、見慣れない駅の風景と地図を重ね発着場を探した。 駅から2,3分歩いた場所にバスの発着する場所を見つけて、14時30分発のバスに乗り病院を目指した。 病院に着くと受付で面会の申し込みをして、母が入院している病棟に向かう。 病棟の入口には鍵が掛かっていて、病棟入口のインターホンを鳴らし、病棟内に入れてもらった。すると看護師が近づいてきて 「斉藤さんですか?」 「はい」 「お母さんは、こちらですよ」と僕を案内する。 連れてこられたのは、昨日と同じ隔離室と書かれた場所であった。 部屋にも鍵が掛けられていて、看護師が鍵を開ける。 部屋には母がベッドに横になっている。その横に優しい表情をした父の姿も目に入った。 僕は母に話し掛ける。 「母さん」 「勇、昨日はごめんね。取り乱しちゃって」 「ううん。大丈夫だよ。具合はどう?」 「もう大丈夫」 「よかった、でも疲れている様だから2,3日入院が必要だって言ってたよ」 「でも、ここにいると余計具合が悪くなりそう。せめて、この部屋から出して欲しいわ」 「そうだよね。これじゃあ囚人みたいだもんね」 面会中も看護師が横にいるので、看護師に母が質問する。 「隔離室からいつ出れますか?」 「医師が判断するので分かりません」 「先生は、いつ回診に来るんですか?入院してから、そこの窓からしか話をしていないんですけど」と隔離室にある小窓を指差す。 「主治医は明日、来ると思いますよ。」 「では、今日も隔離室にいないといけないんですか?」 「まだ主治医の指示が無いので、すいません。」 母は諦めたのか、僕に話し掛ける 「勇ごめんね。トイレも安心して出来ないし、横はうるさいし、ここに居ると気がおかしくなりそう」 「母さん、もう少しの辛抱だから。明日また来るからね」 「ありがとう、そういえば学校は?」 「今日は休んじゃった」 「明日は来なくていいわよ。土曜日に来てくれる。多分退院出来るから」 「分かった。」 僕は看護師と隔離室を出て行った。 そして、病棟の出口に行くと、ナースステーションで昨日、診察していた医師が看護師と笑顔で話している所が目に入った。 僕は看護師に聞く 「あのう、すいません。ナースステーションで話をしている医師は、母の主治医では無いんですか?」 「そうですよ。これから診察するんだと思いますよ」 すると看護師の心の声が聞こえる。 (診察したって、すぐに帰れないよ。) 僕は、看護師を睨んだ。そして看護師に伝える。 「土曜日、退院の準備して来ますから、よろしくお願いします。」 すると看護師は笑顔で 「退院できるといいですね」と言ってきた。 しかし心の声は (無理よ) 何だ?この病院は 僕は黙って病院を出た。 僕は送迎バスの乗り場に向かったが、ちょうどバスが出たばっかりだったので、次のバスが発車するまでの30分間、外来ロビーで時間を潰してからバスに乗った。 結局、駅の発着場に着いたのは17:00を過ぎていた。 バスは、駅近くの飲み屋が多い繁華街に側した道路に止まった。 家に帰っても食事が無いので、繁華街方面に足を運び、食事が出来る店を探す。 結局、繁華街を歩いたが学生が一人で食べれるような店は無く、駅の方面に戻ろうとした時、いかがわしいホテルから女子高生が二人出てきた。 女子高生が二人でラブホテルに行くんだ。と興味が湧き、どんな子が行くのだろうと電柱に隠れて出てきた女の子を見た。 そこには、なんと明日香ちゃんの姿が目に入って来た。 僕は、思わず心の中で(明日香ちゃん!!)と叫んでしまった。 明日香ちゃんは、それに気づき辺りを見回し、電柱に隠れている僕に気づいた様子だった。 すると明日香ちゃんの心の声が聞こえる。 (後で説明するから、私達についてきて) 僕は明日香ちゃんの言うとおり、後を着いて行った。 明日香ちゃん達は駅に向かう。 明日香ちゃんの心の声が聞こえる (新横浜で降りて、それと私達のそばに乗って、心の声で説明するから) 僕は電車に乗り、明日香ちゃんの近くに座った。 そして、彩矢ちゃんの事を聞いた。 僕は質問する (それで、どうするの?) (約束の場所には行かない。彩矢の彼氏の所に行って携帯を取り上げる。) (それって、危険では?) (彼が携帯を出したら、能力で携帯を飛ばして踏みつけて壊すつもり) (えっ その後は?) (逃げる) (ほとんど、ノープランだよね?) (逃げるのを手伝って欲しい。能力で転がすとか?) (子供を助けた時しか、そんな能力使ったこと無いから、出来るかな?) (私もそうなんだよね) (えっ 本当にノープランだね) (何とかなると思うよ) (そうかな?) 電車のアナウンスが聞こえる 「次は新横浜」 そして新横浜に着き、改札を出て路線バスに並ぶ そして、4つ目のバス停でチャイムを鳴らして、路線バスを降りた。 僕達3人しか降りなかったので、僕は明日香ちゃん達が向かう方向と逆の方向に行く素振りを見せ、明日香ちゃん達を追った。 明日香ちゃん達は、2階建のアパートで立ち止まる。 明日香ちゃんの声が聞こえた。 (2階の向かって一番右の部屋) それだけ言って階段を登り始めた。 僕は、見られないように階段の下で隠れて耳を澄ました。 部屋の前に着くと 彩矢「明日香ちゃん、やっぱり止めようよ。もし明日香ちゃんにも被害が及んだら嫌だよ」 「大丈夫よ。とにかく携帯を壊しましょう」 彩矢は震える手でチャイムを鳴らす。 すると彼氏の欣也が玄関の戸を開けた。 彩矢が目に入ると、いきなり大きな声で怒鳴り始めた 「お前、何でここにいるんだよ」 「私、援助交際なんて出来ない」 「はあ?俺と別れたいんだろ?」 ドアの陰で見えなかった明日香が、欣也の前に飛び出す 「あんた彩矢の裸の写真撮ったんだろ。それをよこしなよ。それに手切れ金って何?そんなの彩矢が払うのはおかしいでしょ」 「誰だお前は?」 「彩矢の友達よ。彩矢はこの事で苦しんで、死のうとまでしたのよ。早く携帯を出して」 欣也は少し考えてから 「しょうがない、写真は消しておくよ」 明日香「ここで、目の前で消して」 「携帯は俺の部屋の中だよ。欲しければ取りに行けよ、彩矢なら分かるだろ?」 明日香「自分で持ってきなさいよ」 「何で?俺が持ってこないといけないんだよ?」 彩矢「明日香、私、取りに行く」 そう言って彩矢は玄関から部屋に入っていった。 すると欣也の心の声が聞こえた (馬鹿め) 何かあると思い彩矢に帰ってくるよう声を出そうとしたとき、中から彩矢の悲鳴が聞こえる 「きゃー」 すると、中から彩矢を掴まえたまま男が玄関から見える場所で、彩矢に抱きついた。 「何やってるの。辞めなよ。警察呼ぶわよ。」 すると欣也が明日香ちゃんの腕を掴み、部屋に引っ張り込み、明日香ちゃんが中に入った所で玄関が閉められた。 僕は急いで玄関に向かう。そして玄関のノブを回したが、鍵が掛けられている。 欣也「まだ誰かいるのか?」と明日香に問う。 明日香「知らないわよ」 欣也「そうか、じゃあ俺と楽しもうぜ。写真も綺麗に撮ってやるからな」 明日香「ケダモノ」 欣也「そうだよ」 欣也は明日香を羽交い絞めにして動けない状態にしながら、胸を触り始めた。 明日香「やめろ」 欣也「止めるわけないだろ。」 明日香ちゃんは外にいる僕に助けを呼ぶ (助けて) (警察呼ぶね) (警察はダメ、彩矢の写真が表に出ちゃうかも知れない) 僕はどうしていいか分からず、ただ明日香ちゃんを守りたい一心で (明日香ちゃん!!) すると、僕の身体が玄関の戸をすり抜けて中に入った。 中に入ったが誰も気づかない。 僕は、明日香ちゃんの胸を触っている欣也の腕を掴もうとしたが、掴めない。 何で? すると欣也は明日香ちゃんのブラウスを脱がせ始めた。 そして、胸があらわになる所で僕は、(やめろ!!)と言いながら欣也の顔を殴った。 それも当たらず、僕は体制を崩して欣也の所に倒れた。 すると、僕の身体が欣也に入り込んでしまい、欣也の身体を自由に動かせる。 僕は明日香ちゃんを開放して、欣也の声で 「携帯探して来て」と伝える。 そして、彩矢ちゃんに抱きついている男の所に行き、欣也の身体で殴った。 「何するんだよ欣也」 男の手が離れ、彩矢ちゃんは明日香ちゃんの行った欣也の部屋に入って行った。 男(欣也の友達)は、僕に殴り掛かってくる。 僕は、欣也の身体から離れると、男の拳が欣也の鼻に当たり、欣也が倒れる 欣也「てめえ 何するんだよ」と男に飛び掛かる。 二人が殴りあっている間に、明日香ちゃんと彩矢ちゃんが部屋から出てきて玄関に向かって走りだしていった。 僕は、良かったと思った瞬間、部屋にいたはずなのに、一瞬で玄関の前に立っていた。 すると、玄関のノブが回り戸が開けられる。僕はかろうじて開いた戸の陰になったので、明日香ちゃん達には見られないですんだ。 明日香ちゃんと彩矢ちゃんは階段を駆け足で降りていく。 部屋の中では二人がまだ殴りあっていたので、僕も階段を掛け降りた。
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