第3章 彩矢の危機

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彩矢「明日香、気を付けなよ。あの子は何か怖いよ」 ちゃん付けが消えている。 明日香「うん。気を付ける」 すると笑顔で、 「私が男の子役でいいよね」 「何が?」 「明日香って呼んだら、凄く気持ち良かったから」 「別に名前で呼ぶのは普通でしょ。男女関係なく。」 「じゃあ 今から明日香でいい?」 「別にいいよ」 「私の事は彩矢って言って」 「分かった」 そんな会話が間に入ったが、話はさっきの話にすぐに戻り 「あの子は、化け物だと思うよ」 「化け物?」 「うん。明日香は見えなかった?彼は本当に部屋に入って来たんだよ」 「そんな馬鹿な事ないでしょ。鍵も掛かっていたし」 「だから化け物なのよ。明日香ちゃんが心配」 「何で?」 「だって あの男に好かれているんでしょ。本当に危ないよ。」 「大丈夫だって」 彩矢は真剣な顔をして 「私が明日香を守るからね」 私は苦笑いを浮かべ 「ありがとう」と返した。 でも化け物と言われた事にショックを覚えた。 その化け物に助けられたのに、まるで悪者みたいな言い方が、何よりも複雑な心境であった。私も彩矢のいう化け物だと知ったらどうなるのだろうと考える。 二人はハンバーガーを食べ終え店をでた。 彩矢は辺りを見回し、斉藤君がいない事を確認すると、笑顔で 「明日香、大丈夫みたいよ」と誇らしげに話し掛けてきた。 私は苦笑いを浮かべ 「ありがとう」と返すのだった。 帰りの電車の中で、斎藤君にLINEを送る (彩矢の前には、これから見つからない様にして、化け物だと言っているから) するとすぐに既読になり (分かりました)と書き込みがあった。 そしてLINEが、また送られてくる。 (もしかして彩矢ちゃんと付き合うの?) 全くこの男は緊張感が無い。 (馬鹿) とだけ書き込む すると (えっ?どっち?) 私は既読無視した。 日曜日は、店も営業していないので我が家の朝は遅いのだが、今日の神城家の朝はいつもと違っていた。 私は目が覚めリビングに行くと日曜日は昼まで寝ているはずの父の姿があった。 「どうしたの」 「朝からあいつに起こされた。」 「あいつって誰?」 「斉藤だよ。何だか相談があるとか、無いとかで、アルバイトに行く前に来たいって言ってたぞ」 「家に来るの?」 「あ〜そうだよ」 「電話で話せばいいでしょ」 「お前に会いたいんだろ」 「私は嫌よ。店で話してよ」 すると携帯の着信音が鳴り 彩矢からの電話だったので出ると 「明日香、ヒマ?ヒマだよね。私今駅に着いた。」 「えっ?」 すると玄関のチャイムが鳴る。 父が「おっ来たか」と玄関に向かう。 彩矢の声が携帯越しから聞こえてくる。 「今から喫茶店KINGに向かうね」 すると通話が切れた。 父が玄関で靴を履きながら 「何か忙しそうだから、こっちは喫茶店に行くよ」 私は慌てて父を止める 「ちょっと待って、家にして。私が喫茶店を使うから」 私は急いで部屋に戻り着替える。 私が着替えている間に斉藤君は家に入り、リビングのソファーに座っている。 父は、コーヒーを入れるのに、お湯を沸かすためキッチンにいた。 私は着替え終えて、リビングの奥にある洗面台に向かうため、リビングを通り過ぎる。 リビングで斉藤君と目が合うと挨拶もせずに要件を心の声で伝える。 (この前の事は父には内緒。 それと彩矢がこっちに向かっているので、私がいいって言うまで、絶対に家から出ないで) (でもバイトが)と斉藤君の心の声が聞こえたが無視した。 何とか支度が終わると彩矢から着信が入った。 「喫茶店の前に着いたよ」 「今行く」と返事をすると、リビングの壁に掛けてあった店の鍵を持って玄関から外に出て店の前へ急いだ。 店の前に着くと短パン姿の彩矢が、店の前のレンガ造りの花壇に座っていた。 「彩矢寒くないの?」 「もうすぐ7月だよ。それにJKは足を出すのが決まりなのだ。」 「自分でJKって」 私は思わず吹き出した。 「明日香ひどい。何で笑うの」 「彩矢といると楽しいなって思っただけよ」 「あっそれって嬉しいかも」 私は、入口部分のシャッターだけを開けて店の鍵を開けて中に入った。 「ごめんね。父の知り合いが来てるから家に入れないの」 「いきなりだったから、しょうがないよ」 「本当にいきなりなんだもん。びっくりしちゃったよ」 「迷惑だった?」 「迷惑よ」 「え〜ごめんね」 「嘘よ。でも今度からは早めに言ってね」 「分かった」と元気よく答える。 サイフォン式コーヒーを入れる為、火をつけると、彩矢が物珍しげに器具を見つめる。 「理科の実験みたいね」 「うん。でも一回飲んでみて、美味しいから」 彩矢は出来上がったコーヒーを飲むと、 「美味しい」 「本当に?」 「うん。本当に美味しい。明日香ちゃんが入れてくれたから、更に美味しい」 「あれ?明日香って呼ぶんじゃあ無かった?」 「あっ間違えた。明日香が入れてくれたから美味しい」 「別に言い直さなくてもいいのに」 と二人で笑った。 「でっ今日は何するつもり?」 「何かヒマだったから、つい明日香に会いたくなっちゃって」 「私は暇つぶしなのかな?」と怒った口調で問いただす。 「ねえ明日香、映画行かない?私、ここ2、3年映画館に行ってないから、久しぶりに行きたい」 「何やってるの?」 「う〜ん。分からないけど、映画館で決めよう」 「全く無計画なんだから」 「じゃあ、店を閉めようか」 そして二人は店を出て、二人でシャッターを閉める。 私は鍵を置きに家の玄関に向かった。後ろから彩矢もついてくる。 玄関の前に着くと、玄関のドアが開き、斉藤君が家から出て来た。 思わず (この馬鹿!!)
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