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「明日香、どういう事?何であいつが明日香の家から出てきたの?」
私はとっさに話を作った。
「黙っててごめんね、パパの知り合いの息子なの、私も最近知ったんだけど。この前ハンバーガーショップで言おうとしたんだけど、彩矢が怖い事言うから言い出せなくて、ごめんね」
「そうなんだ」と納得した表情に変わる。
「それなら、明日香は悪く無いよ。でもあいつ何者?」
「彼は斉藤君。斉藤君のお母さんがパパとママの同級生。斉藤君のお父さんが亡くなって、お母さんと二人で暮らしているんだけど、この前、母親が急病で入院した時に、パパに連絡があって、パパと私が二人で病院まで付き添ったの。その時に初めて斉藤君の事を知ったんだ」
「向こうは明日香の事知ってたの?」
「パパの娘って事は、その時に知ったみたい。」
「危ないわね。」
「何が?」
「この展開は、偶然知り合い、恋に落ちる典型的なパターンよ」
心の中で(そっちか)と思ったが、疑いは完全に晴れたようであった。
「斉藤君は大人しいから、そんなに危険な感じでは無いよ」
「信じられないと思うけど、この前も言ったけど、彼は化け物よ。本当に何か些細な事でも変だと感じたら、私に言ってね。私が明日香を守るから」
「そういえば、この前も私を守ると言っていたけど、化け物からどうやって守ってくれるの?」
「これを言ったら明日香に気持ち悪く思われるかも知れないけど。実は私も超能力があるみたいなの」
「超能力?」
「不思議と明日香にだけ使えるのよ。もしかして赤い糸で結ばれているのかも、私達」
私に対する妄想の事だと直ぐに分かった。これ以上この話をすると、こっちが危ないので、話を切り替える。
「そうなんだ、じゃあ安心だね。映画に行こうか?」
「うん。じゃあ映画館で私の能力見せてあげようか?」
「ううん。見せなくていいよ。私、その能力の事、もしかして知っているから。もし、その能力私に使ったら怒るわよ」
「やっぱり、分かってたの」
「あの時のバスでは分からなかったけど、彩矢がやったんだと今の話で分かった。私にしか効かないとか赤い糸だとか」
「あちゃ~ もしかして自爆しちゃったのかな」
「もしかして、映画って?」
「ごめんなさい。私、悪い事考えてました。」
「もう、この前のバスみたいな事されるのは嫌よ」
と顔が赤くなる。
「でも、あの時感じてたでしょ?」
「知らない」
彩矢の心の声が聞こえた
(良かった嫌われなくて、明日香からすれば私も化け物だもん)
そんな純粋に私の事を思ってくれる彩矢に、嘘をついている事に心苦しくなった。
どっちにしても私が能力者だと言う事は、間違っても言えないと思った、そして、この嘘は絶対に突き通さなければいけない嘘だと心で誓った。
それから彩矢も私に対する妄想もせずに、映画を見終わり食事をしてから別れた。
家に着き、父に斉藤君からの相談内容を聞いた。
「それで斉藤君は何の話だったの?」
「あ~母さんが退院出来ないので、もし入院が長引く様だったら、来てほしいと言われた」
「それだけ?」
「うん。大事な用件は、それだけ」
「大事じゃあない用件は?」
「あれ?お前、斉藤が気になるのか?」
「何言ってるのよ、能力の事が気になるだけよ」
「まあいいか。父親の表情が穏やかだった事とか、何だか自分がAになって動いたって言ってたな。」
「Aになって動いた?」
「あ~俺もそんな事なった事ないから、答えれなかったよ。だからHPで確認してやると言ってやった。」
「もしかしたら、あいつは俺よりも能力が使える幅が大きいのかもな。」
「能力の幅って?」
「Aを使って、物を動かしたりする力、壁の向こうなどを見る力、未来を見える力、能力者以外にも心の声を聞かせる力、別の場所に移動する力等は、HPのメンバーにもいるよ。多分、彼は壁の向こうを見える力なんだろう。」
「そうか、彼がAになって動いたってのは、そういう事なんだね」
「あれ?お前も斉藤が力を出した事知ってるの?」
私は、思わずあの現場の事を思いだしてしまった。
「あれ?斉藤が見ていた現場に似てるな」
「思い描いた事も見えるの?」
「俺はどうやら人の感情を読み取る事に長けているんだよ。人の思い描く事は見えるし、人の思いも聞けるよ。ちなみに心の会話も聞けるよ。みんなは聞こえないみたいだけど」
「えっそうなの?」
「朝の二人の会話も聞こえてたから、何か隠している事は分かったよ」
私は、観念して彩矢の事件の事について、全部話した。
すると父が真面目な顔をして
「人に乗り移ったのか?」
「うん」
「その子はどうした?」
「分からない。でも彩矢が連絡無いって言ってたよ」
「何とも無ければいいのだが」
「どういう事?」
「以前、HPで人に乗り移ったら、乗り移った人が数日後に死んだって、聞いた事はある。そして乗り移った人も、それからHPに顔を出さなくなった。」
「その人も死んじゃったの?」
「いや分からん」
「もし、あの子は自分が殺したと思ったら、多分立ち直れなくなるよ。そうとう心が弱いから」
「お前の話を聞いて、俺も心配になった。HPでそれも確認しておこう」
「そうね、その方がいいわね」
父の心の声が聞こえる
(それで、HP見てくれるか?)
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