第3章 彩矢の危機

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「明日香、どういう事?何であいつが明日香の家から出てきたの?」 私はとっさに話を作った。 「黙っててごめんね、パパの知り合いの息子なの、私も最近知ったんだけど。この前ハンバーガーショップで言おうとしたんだけど、彩矢が怖い事言うから言い出せなくて、ごめんね」 「そうなんだ」と納得した表情に変わる。 「それなら、明日香は悪く無いよ。でもあいつ何者?」 「彼は斉藤君。斉藤君のお母さんがパパとママの同級生。斉藤君のお父さんが亡くなって、お母さんと二人で暮らしているんだけど、この前、母親が急病で入院した時に、パパに連絡があって、パパと私が二人で病院まで付き添ったの。その時に初めて斉藤君の事を知ったんだ」 「向こうは明日香の事知ってたの?」 「パパの娘って事は、その時に知ったみたい。」 「危ないわね。」 「何が?」 「この展開は、偶然知り合い、恋に落ちる典型的なパターンよ」 心の中で(そっちか)と思ったが、疑いは完全に晴れたようであった。 「斉藤君は大人しいから、そんなに危険な感じでは無いよ」 「信じられないと思うけど、この前も言ったけど、彼は化け物よ。本当に何か些細な事でも変だと感じたら、私に言ってね。私が明日香を守るから」 「そういえば、この前も私を守ると言っていたけど、化け物からどうやって守ってくれるの?」 「これを言ったら明日香に気持ち悪く思われるかも知れないけど。実は私も超能力があるみたいなの」 「超能力?」 「不思議と明日香にだけ使えるのよ。もしかして赤い糸で結ばれているのかも、私達」 私に対する妄想の事だと直ぐに分かった。これ以上この話をすると、こっちが危ないので、話を切り替える。 「そうなんだ、じゃあ安心だね。映画に行こうか?」 「うん。じゃあ映画館で私の能力見せてあげようか?」 「ううん。見せなくていいよ。私、その能力の事、もしかして知っているから。もし、その能力私に使ったら怒るわよ」 「やっぱり、分かってたの」 「あの時のバスでは分からなかったけど、彩矢がやったんだと今の話で分かった。私にしか効かないとか赤い糸だとか」 「あちゃ~ もしかして自爆しちゃったのかな」 「もしかして、映画って?」 「ごめんなさい。私、悪い事考えてました。」 「もう、この前のバスみたいな事されるのは嫌よ」 と顔が赤くなる。 「でも、あの時感じてたでしょ?」 「知らない」 彩矢の心の声が聞こえた (良かった嫌われなくて、明日香からすれば私も化け物だもん) そんな純粋に私の事を思ってくれる彩矢に、嘘をついている事に心苦しくなった。 どっちにしても私が能力者だと言う事は、間違っても言えないと思った、そして、この嘘は絶対に突き通さなければいけない嘘だと心で誓った。 それから彩矢も私に対する妄想もせずに、映画を見終わり食事をしてから別れた。 家に着き、父に斉藤君からの相談内容を聞いた。 「それで斉藤君は何の話だったの?」 「あ~母さんが退院出来ないので、もし入院が長引く様だったら、来てほしいと言われた」 「それだけ?」 「うん。大事な用件は、それだけ」 「大事じゃあない用件は?」 「あれ?お前、斉藤が気になるのか?」 「何言ってるのよ、能力の事が気になるだけよ」 「まあいいか。父親の表情が穏やかだった事とか、何だか自分がAになって動いたって言ってたな。」 「Aになって動いた?」 「あ~俺もそんな事なった事ないから、答えれなかったよ。だからHPで確認してやると言ってやった。」 「もしかしたら、あいつは俺よりも能力が使える幅が大きいのかもな。」 「能力の幅って?」 「Aを使って、物を動かしたりする力、壁の向こうなどを見る力、未来を見える力、能力者以外にも心の声を聞かせる力、別の場所に移動する力等は、HPのメンバーにもいるよ。多分、彼は壁の向こうを見える力なんだろう。」 「そうか、彼がAになって動いたってのは、そういう事なんだね」 「あれ?お前も斉藤が力を出した事知ってるの?」 私は、思わずあの現場の事を思いだしてしまった。 「あれ?斉藤が見ていた現場に似てるな」 「思い描いた事も見えるの?」 「俺はどうやら人の感情を読み取る事に長けているんだよ。人の思い描く事は見えるし、人の思いも聞けるよ。ちなみに心の会話も聞けるよ。みんなは聞こえないみたいだけど」 「えっそうなの?」 「朝の二人の会話も聞こえてたから、何か隠している事は分かったよ」 私は、観念して彩矢の事件の事について、全部話した。 すると父が真面目な顔をして 「人に乗り移ったのか?」 「うん」 「その子はどうした?」 「分からない。でも彩矢が連絡無いって言ってたよ」 「何とも無ければいいのだが」 「どういう事?」 「以前、HPで人に乗り移ったら、乗り移った人が数日後に死んだって、聞いた事はある。そして乗り移った人も、それからHPに顔を出さなくなった。」 「その人も死んじゃったの?」 「いや分からん」 「もし、あの子は自分が殺したと思ったら、多分立ち直れなくなるよ。そうとう心が弱いから」 「お前の話を聞いて、俺も心配になった。HPでそれも確認しておこう」 「そうね、その方がいいわね」 父の心の声が聞こえる (それで、HP見てくれるか?)
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