第1章 二人の高校生

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時計を見ると15分程、過ぎていた。明日香ちゃんとの会話に時間が経つのを忘れていた。 そして3人で喫茶店に向かう。 窓はブラインドを下げ、中が見えないようにして、僕と明日香ちゃんはテーブルに座る。 マスターがコーヒーを3つ入れて、テーブルに座り3人が同じテーブルに座る。 ただ、苦手なコーヒーを飲もうか迷ってしまう マスター「一回飲んでみろ」 勝手に物事を考えてしまう。 マスター「まあ、人が考える事を止めるのは難しい。というか無理だよ。早く、自分の心を人に聞かれないように出来るように訓練するんだな。」 僕「そんな訓練出来るんですか?」 マスター「能力を持つもの同志で訓練するんだよ」 明日香「パパは誰と訓練したの?」 マスター「ママだよ」 明日香「ママも能力があったの?」 マスター「最初はママが持っていて、ママが病気で手術している時、一生懸命祈ったあとから、この能力が使える様になった。」 僕「では、もしかして手術は・・・」 マスター「良く分かったな。失敗したよ。失敗というか癌が思ったより転移していたみたいで、直ぐに手術が中止になったんだけど。ただ、退院して半年は生きてくれた。この能力で何とか直せないか、色々試したけどダメだった。治癒魔法みたいな事は出来なかった」 明日香「そうだったんだ。ママが亡くなるとき、よく家を出て行ったのは、そんな事をしてたんだ」 マスター「だから、よく明日香には、ママを治すために出掛けてくるって言ってただろ」 明日香「今なら分かるけど、その時は理解できないよ」 マスター「おっ。今までの悪人の親の見方が変わったな」 明日香「だから、心を読まないで」 マスター「だから、心の声が聞こえないように訓練しないとな」 僕「この力を持っていると、どちらかというとマイナスな部分が多い様な気がするんですが」 マスターが笑いだした。 マスター「そうか、君はそう思うか。その気持ちは忘れずにいるんだぞ」 僕「はあ?」 マスター「この力は、使い方によっては、人を傷つけたり、自分の富を得る事も出来る。」 僕「確かにそうですが、それを望まない人には、宝の持ち腐れですね。」 と話す。 明日香「何で、パパは喫茶店を続けているの?」 マスターの心の声が聞こえた (ママと一緒に作った店だし、ママと一緒に居たいから) 明日香ちゃんが目を潤しながらマスターに話す「自分の声で言ってよ」 僕「一緒にいたいとは?」 すると奥から女の人が現れた。ただし白い雲のようだ。誰かの分身?と思った時 明日香「ママ!!」 マスター「ママはこの店に強い思い入れがあって、身体は消えたが心は残ったんだ。多分、世間一般的には幽霊って事かな」 僕「身体が無くても会話は出来るんですか?」 マスター「会話は出来ないけど、いるだけで満足なんだ。この場所から離れられないみたいだから、この場所に留まるしかママと居れないんだよ。だから、他の人の様に商店街から出ていく事は出来ないんだ。」 僕「すいません。僕、マスターの事、誤解してました。」 マスター「だから、俺は皆の心を自分から聞けるんだって。この店に来る人の心は分かっている。でも俺に対する思いは、いろんな意味で誤解してくれてた方が助かる。」 僕「確かにそうですね。マスターが怖いから変な事も出来ないですから。それと、一度聞きたかったんですが?」 マスター「このサングラスの事か?」 僕「はい」 マスター「外を歩いていて、白い雲みたいなものが見えなかったか?」 明日香「確かにボヤがかかったような感じだったわ」 マスター「それは人の心だよ。身体が無くなって心が残ったんだよ。身体の形をしているのも、たまにいるよ。この能力を持っている人は体の形になるけど、殆どが能力を使えない人だから、心が小さい雲の様に浮いているんだよ。そして、太陽に当たると反射する様に眩しい。だからサングラスは必需品なんだよ」 「確かに昼間は、眩しいかも。でも、部屋の中でサングラスはどうかと思うんですが?」 マスター「それは、さっきも言ったように、脅しだよ、お・ど・し」 マスター「それと、この能力で店の女の子が嘘をついていないか分かるしな」 「じゃあ、ここで働いている子は、本当に彼氏がいないんですか?信じられない」 マスター「うちは、彼氏を作ったら解雇だから」 「嘘がつけないって、怖いですね」 マスター「それが、社会ってもんだよ」 明日香「そんな事どうでもいいから、この能力は、どんな事まで出来るの?」 マスター「あ~そうだった。物を動かしたりする事は分かってるよね。でも、強く祈らないと物を動かす事も出来ない。心の声が聞こえるのも、制御するのが難しい。何かに集中している時は聞こえない。ただ、集中していない時は聞こえてきちゃうので、お前たちは辛いかもな」 明日香「そうか。うわべの友達の声が聞こえちゃうんだ。うわ~それは嫌だな。分かっているだけに」 (僕は友達が少ないから、もし、変な声が聞こえたらどうしよう) マスター「そうか、お前は心配だな。変な気を起こすなよ」 マスターに心を読まれた。確かに僕は自分でも心配であった。 マスター「ただ、近くにいなければ聞こえないし、画面を通しても聞こえない、」 明日香「じゃあ、TVに出てるタレントの心の声も聞こえないのね。」 マスター「そういう事だ。そうだ少年、携帯のアドレスを教えろ」 「はい?」 マスター「何かあったら、メールでも、電話でもいいから連絡しろ」 「自分で何とかするので、大丈夫ですよ」 マスター「明日香の携帯のアドレスも教えるんだぞ」 明日香「え~私も?でも彼は嫌がってるから」 (えっ 明日香ちゃんのアドレス?欲しい) 僕はつい考えてしまった。 マスターは明日香ちゃんを見ながら 「なっ」 明日香「分かったわよ。教えればいいんでしょ、教えれば」 僕は二人とアドレスを交換した。 マスター「それと大事な事を言い忘れた。この能力を引き出せた人は必ずいい人ではない。人を憎しむ気持ちが強く能力を引き出した人もいる。俺達と見分けがつかないので、能力をもっている人を見かけても、声を掛けない方がいい。人っていうのは一人だと何もできないけど、仲間が出来るとこの能力を使って悪い事を考える生き物だから。それに憎む気持ちで能力を出せても、自分の分身が見えない人がいる。これは、凄くやっかいな人で、平気で人を殺してしまう。」 「そんな事って?」 マスターの心の声が聞こえる (いつか分かるよ) マスター「じゃあ、もう遅くなっちゃたから、今日は特別に送って行ってやるよ」 「ありがとうございます」 マスター「明日香は飯作っててよ」 明日香「分かった」
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