第2章 母への怨念(ユウ)

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マスターの言葉に母が言っていた言葉と父の表情を思い出す。 しかしマスターは先程、黒い影と言っていたが、人の形ではなかったのだろうか? マスター「俺がめぐみを見たのは、2ヶ月程前の話だ。あの時はめぐみの周りが黒く影の様になっていたけど。いつの間にか人の形に成長したんだろうか?」 「分身が成長する事ってあるんですか?」 「いや、俺も聞いた事が無い。ところで家の中で父親の姿を見た事なかったか?」 「はい」 「倒れていた書斎にも、いなかったか?」 「書斎は能力を持ってから入っていません。あの部屋は、滅多に入りませんので」 「そうか、でも病院にも父親の姿があったから、家にいた訳では無いんだと思うが」 「そうですね。明日香ちゃんのお母さんは、あの店から出れないんですよね? それにしても、父に能力があったのかな? 人の形になっていたけど」 マスター「めぐみの旦那は、交通事故で亡くなったんだよな? 交通事故みたいに死が直面する場合、様々な想いが強くなるから、人の形になったのでは無いかな?」 明日香「でも、それだったら病気で死ぬ時も、皆そうなるのでは無いかな?」 マスター「病気で力を持っている人は、前にも話したが人の形になるけど、病気の場合は、あまりいないよ。事故、自殺、殺人等で死んだ人の方が多い。」 「そうなんですか。では父も交通事故の時に、何か強い想いを念じたのかな?」 マスター「そう考える方が無難だと思うが、もしめぐみが旦那を殺そうとしたのなら、怨念を抱いてもしょうがないが」 マスターが話していると明日香ちゃんが話を遮る。 明日香「パパ!斎藤君のお母さんが殺したみたいな事言わないで。証拠もないのに。親を殺人者扱いされる子供の事も考えて」 明日香ちゃんは怒った口調でマスターに話す 「明日香ちゃん、ありがとう。でも僕もちょっと疑っちゃっているんだ。ただ、病院で見た父は、家で見た時より顔が普通に見えた様な気がして」 僕は病院でマスターが言った言葉を思い出す。 「そういえば、明日になったら母は父の事が見えないと言っていましたが?」 「もし、めぐみが能力を持っていたら、俺たちの分身も見えるはず、首を締めたり、心臓を掴まれたと言っていたが、俺は旦那がやったとは思えないんだよ。」 「どうしてですか?」 「もし旦那がやっていたら、もう死んでてもおかしくない、現に旦那は家に居て玄関にいたんだろ。結局は気を失っただけだったんだから。」 「確かに母は特別に命を脅かす外傷も無かった。」 マスター「と言うことは旦那が横に入れば、死ぬ事は無いと思う。どちらかというと、家に帰ってきた方が怖い気がする。」 明日香「でもさっき診察の時、斎藤君のお母さん、お父さんの姿が見えたよね」 マスター「今回は俺も知らない事だらけで、少し考えさせてくれ。」 「でも本当に明日香ちゃんとマスターがいてくれて助かりました。もし僕だけが能力を持ったら、どうなっていたんでしょう。考えただけでも、寒気がします。」 そして車は、僕の家の前で止まった。 マスター「一人で大丈夫か?」 「はい。本当に今日は、ありがとうございました。」 明日香「じゃあね」と明日香ちゃんが手を振ってくれたので、僕は照れながら手を振った。 そう言って家に帰ったのであった。
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