第2章 母への怨念(ユウ)

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第2章 母への怨念(ユウ)

水曜日 終業のチャイムが学校に響く。 圭「今日も行くだろ?」 勇「何処に?」 壮太「何言ってるんだよ、KINGに決まってるだろ」 皆は明日香ちゃんが辞めたのを知らないのだ。 勇「うん。当たり前だろ」 と言葉を合わせる。 そしていつものように、時間を潰して喫茶店に向かう。 明日香ちゃんがいないのに、喫茶店に行くのも複雑な気分だったが、皆が明日香ちゃんが辞めたのを知らないので、仕方なく喫茶店に足を運ぶ。 圭「ユウどうしたの?いつみたいな元気が無いね?」 勇「そうかな?」 圭「なんか行きたくないみたいな感じだぞ。どうかしたのか?」 勇「ちょっと、疲れているのかも」と誤魔化す。 壮太「何もしていないのに?」 そこで3人で笑う。 圭「そうだよ。お前から明日香ちゃん取ったら何が残るんだよ」 そんなくだらなく、そして心地がいい会話をしながら喫茶店に着いた。 喫茶店に入ると辞めたはずの明日香ちゃんが目に入った。 そして、その後ろには背は平均的で明日香ちゃんより少し小さいがスタイルは抜群である。痩せているのだが、出る所は出ている。髪は二つ結びにして、目は二重で大きく歩き方等から、お嬢様と感じられるしぐさをする。 胸には「京香」と書かれていた。 僕達は席に案内されて、京香ちゃんから注文を受ける。 僕はいつものように「ジンジャーエール」を注文すると、明日香ちゃんの心の声が聞こえた。(この前コーヒー飲んだのに、ジンジャーエール頼むのか?) 心の声で返答する。(やっぱり、コーヒーは苦手) 心の会話等知らない、二人は話し掛ける内容について相談し始める。 壮太「今日は二人に話し掛けていいのかな?」 勇「どうだろう。僕は、明日香ちゃんしか興味が無いけど」 圭「ユウは、明日香ちゃん見たら、さっきまでの暗い表情が無くなったね」 勇「そんな事ないよ」 壮太「全然違うよ。でも二人いるって事は、明日香ちゃん辞めるのかな?」 圭「ユウが、明日香ちゃんに聞いてみなよ。その後、こっちも質問するから」 勇「俺が?」 二人が頷く。 辞めるのは知っているのだが、話の流れで受けるしかない。 勇「分かった。聞いてみるよ」 心の声だと気軽に話し掛けれるのだけど、いざ、言葉で話し掛けようとすると、緊張してしまう。 明日香ちゃんが席の横を通る時に思い切って声を掛ける。 勇「あの~すいません」 明日香ちゃんが僕達の席の所で立ち止まる。 勇「明日香ちゃん辞めるんですか?」 明日香ちゃんは、呆気にとられたような顔を一瞬みせたが、状況を把握したのか 「うん」とだけ答える。 すると圭が僕を指差しながら話し掛ける 「明日香ちゃん辞めないで下さい。ユウが明日香ちゃんに会えないと死んでしまう」 明日香ちゃんは冷静に 「無理」 更に壮太が 「せめて、アドレス交換だけでもしてあげて下さい。本当に死んでしまう」 二人の言葉を聞き、僕は二人が僕を思ってくれる気持ちに感動した。 すると明日香ちゃんがポケットからオーダー用紙を1枚取り出し、ボールペンで何かを書いた。 「死なれたらたまらない。これ電話番号。ただし、そこの人だけだからね」と僕を指差す。 すると、マスターのドスがきいた声で僕達に向かって 「おい。君たち何してるんだ?」と殺気を感じる。 僕は慌てて、電話番号を書いてくれた紙を明日香ちゃんに返した。 勇「すいませんでした」 明日香ちゃんは、僕達の席から離れていった。 圭「ごめんな。もう少し小さい声で聞けば良かった。せっかく教えてくれたのに」 僕は蚊の鳴くような小さな声で 勇「書いた面を表にしてくれていたので、電話番号記憶したから大丈夫だよ。」 壮太「じゃあ、今のうちに忘れないうちに、トイレにでも行って登録してこいよ。このタイミングで携帯いじったら、みせろとか言われそうだから」 僕は席を立ち、明日香ちゃんが立っている横を通り過ぎ、トイレに向かった。 すると、明日香ちゃんの心の声が聞こえる (ここで電話番号教えた方が、何かといいでしょ) 明日香ちゃんのやさしさと配慮を感じた。こんな事が瞬時に考えられる明日香ちゃんの凄さも知った。 そして、僕も心の声で(ありがとう。明日香ちゃんって、本当にやさしいね) するとマスターの心の声がした (店で騒ぐな) 一気に気持ちのトーンが下がり (すいません。二人にも言っておきます。) 僕はトイレに入ったが、既に登録してあるので、登録する時間を見計らってからトイレを出て、席にもどろうとした時、京香ちゃんが注文した飲み物を僕達の席に運んでいる所だった。奥の席の圭の所に慣れない手つきでコーヒーを置いている。 そんな京香ちゃんのヒップラインに見とれながら席に座った。 京香ちゃんの姿を見て、何の欲情もしない事など女性経験の無い僕には、到底できる事では無い。 京香ちゃんの姿を明日香ちゃんの姿につい重ねてしまう。ウェイトレス姿の明日香ちゃんの姿をみるのは今日が最後なので、余計その欲情は抑えられない。 でも、ここで明日香ちゃんの事を思えば、そのまま心の声で聞こえてしまう。マスターが言っていたように、明日香ちゃんに対していやらしい事を想像すると、もしかして明日香ちゃんに伝わってしまうかも知れない。もし、そんな事が知れたら話してもらえないのは確実だ。この能力が無かった頃は、普通に欲情を心の中で妄想を膨らませていたのに、自分の感情を抑える事が、こんなに難しいと感じたのは生まれて初めての事だった。 その時、壮太が京香ちゃんに話し掛ける。 「僕の名前は「朝田 壮太」です。よろしくね。」 今まで自分の名前を伝える事など無かったのだが、もしかして京香ちゃんの事を壮太は、好みのタイプなのかも知れないと感じた。 圭もそれを察したのだろう、京香ちゃんの返答が来る前に 圭「僕は、朝田壮太の友達の「紺野 圭」です。」 この流れに乗り、 「僕は朝田壮太の友達の「斉藤 勇」です。」と圭に続いた。 京香ちゃんはゆっくりとした口調で 京香「朝田君と紺野君と斉藤君ですね。これからもよろしくお願いします。」 壮太「よろしくお願いします。」 壮太が照れているのが分かった。 本当に分かりやすい。 僕も明日香ちゃんに対して、こんな態度だったのかな?と感じる。 自分の愛情を感じる人と話す時は、特別な感情が湧き出て上手く話せない、人とは分かりやすい生き物なんだなと改めて分かった気がした。 それにしても、京香ちゃんのプロポーションは目を引く。 だが、例え京香ちゃんのプロポーションが良くても、僕は明日香ちゃんの方が好きだ。と強く思った。 いや、思ってしまった。 明日香ちゃんの心の声が聞こえた (どうせ、私はスタイルが悪いですよ。この変態) やってしまった!僕は慌てて明日香ちゃんをみた。 すると圭が「ユウどうしたの?」 僕は明日香ちゃんの方を向いた顔を元に戻して 「いや何でもない」 前にいた京香ちゃんが 「斉藤君は、明日香さんが気になるのですね?」と尋ねられ 僕は下を向いてしまった。 すかさず圭が「彼は明日香ちゃん命だったから、すいません」と京香ちゃんに謝る。 その時である京香ちゃんの心の声が聞こえた (お前みたいな生き物が、私を見下してるんじゃねえよ) !! この丁寧な口調の女の子が、こんな醜い心を持っていたのか、ただ壮太は京香ちゃんに夢を抱いている。僕は夢を壊さないよう、黙っておこうと思ったのであった。 ただ、つい明日香ちゃんに心で話掛けてしまった (この子って) (気づいたんだ。パパも知っていたんだけど、興味本位で使ってみようと、その子にしたのよ。ただ、ヘルプで来ている時から人気はあるみたいよ。男ってバカばっかりだよね) 僕は苦笑いするしかなかった。 (誰かもプロポーションがどうとかって言っていたような気がしたけど、私の勘違いかな?) (ごめんなさい) 明日香ちゃんの自尊心を傷つけた報いを受けたのであった。 僕達は飲み物を飲み終え、喫茶店を出ようと席を立ち、レジに立つマスターに支払いをする時、マスターの心の声が聞こえた。 (何かあったら、すぐに電話しろ) 僕は、何の事か分からなかったが、気にせず喫茶店を後にした。 喫茶店を出ると壮太が話し始める。 「俺、京香ちゃんが本当に好きなタイプだ」 圭「壮太の気持ちが思いっきり伝わったよ」 壮太「二人ともありがとう。マジで俺、水、土と通うよ」 圭「頑張れ。俺達も応援するよ。なっユウ」と僕の肩を叩く 「うん。僕も思いっきり応援してくれたから、壮太の事も思いっきり応援するよ」 壮太「ありがとう。本当に感謝するよ」 こんなに喜んでいる壮太に水を差す事なんか出来ない。僕は、知らないふりをするしか無かった。でも、心の中で罪悪感を覚えたのであった。 その日の帰り、二人とも途中で別れ家の前に着く。 家は電気が点いていて、母が帰宅している事が分かった。 この頃、日勤でも職場の人と飲みに行っていて、顔を合わせない日々が続いていた。 そんな時は、LINEで「夕食、自分で買って」と、連絡が入る。今日は連絡も無かったので、久々に作り立ての夕食が食べれるのものと思って、玄関を開ける。 玄関に入ると、凄まじく怒った表情の父の姿があった。
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