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自殺
ピンポンピンポンピンポン!
ドンドンドンドンドン!
玄関から聞こえるけたたましい音を聞き、佐知子は眠い目をこすりながら玄関へと向かう。そして念のため玄関のチェーンロックをかけた後ドアを開けた。ドア越しに見えたのはグレーのスーツを着た男。男は寝ぼけまなこの佐知子の前に警察手帳をつきつけた。
「景山佐知子さんですね?」
「警察が、どうかしましたか?」
「あなたのご子息・陽介君と思われる男の子が遺体で発見されました」
「え?」
佐知子は男が一瞬何を言っているのか分からなくなり、思わず訊き返した。刑事は困惑する佐知子を前に再度状況を説明する。
「はい。お気の毒ですが今朝、ご子息の陽介君と思われる男の子がこのアパート付近で血を流して倒れているのが見つかりました。発見されたときにはすでに心肺停止の状態で、先程病院で死亡が確認されたばかりです」
血、心肺停止、死亡……佐知子には刑事の発する言葉が無機質な日本語の羅列にしか聞こえない。
「本人確認をしていただきたいので、一度現場にいらしていただきたく思います」
佐知子は刑事に向かって頷くと、すっぴんのまま、アパートの5階から階段を降りていった。
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