自殺

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 担架に被せられていた白い布を少しだけめくる佐知子。そこにはもうすでに唇が真っ青になった変わり果てた陽介の顔があった。昨日まであたりまえのように開いていた両眼が開くことはもう、ない。 「ご子息に間違いありませんね?」 「はい……」  刑事の問いかけに対し、佐知子は消え入るような声で一言そう吐いた。  刑事の元に制服を着た1人の警官がやってきた。 「斎藤係長、屋上からは仏のものと思われる下足痕が見つかっています。下足痕はこのアパートの5階のフェンスを越えたところにも見つかっていますので、自殺の線が限りなく濃厚かと……」 「どうして?」  佐知子が間に入った。 「陽介がどうして自殺なんかしなくちゃいけないのよ!」 「お母さん、落ち着いてください」  ないまぜになった感情を爆発させた佐知子を斎藤が必死になだめる。 「あの子に限って自殺なんてするわけがないじゃない!」 「ですから、まだ真相が分かったわけではありません」  強い口調で斎藤が再びそう発すると佐知子はため息をつき、口をつぐんだ。 「お気持ちはお察しします。我々は必ず真実を見つけ出しますから、お母様も気を確かにお持ちください」  斎藤は先程とは一転、温かい口調でそう告げた。
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