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「...別に偏見はないからね。苦労させずに生きられるんだったら、それが最高じゃん。もちろん...あいつの気持ちを捕まえての話しなけれどな。ハハハ、お前にそれができるかは、私がそばで見ておくよ」
啓太が席を外したほんの瞬間、俺だけに聞こえるように呟かれた。
反論もできなかった。
鬼だ。悪魔だ。誰がマドンナだ。誰が妖精だ。
腕を組み、学校のジャージを着て仁王立ちしながら勝者の貫禄。見下ろされてないのに、見下された感覚がすげーする。
鋭い観察力には完敗で、同じ土俵に立ってもすでに結果が見えているという惨めな俺。
ずっと閉じ込めておくつもりだった。
けど、受験の話が出てきて大学、就職をイメージできるようになり、一足先に働き始めた夏さんをみていたら、焦りがでていた。
別にホモ?ゲイ?その違いがわからないけど、他の男は眼中にない。啓太だけがいい。啓太だったら、どんなことでもできる。ただの執着?そうであったらこんなに悩んだりしなかった。
啓太が喜ぶならどんないかがわしい要求も全力で受ける。啓太が楽しいって思えるなら、コンパにも参加できる。
もちろん、持ち帰られないかは見ておくがな。
だって、啓太はカワイイ。
自分は平凡だと思っているところからカワイイ。見た目は確かに、化けている夏さんと比べると華やかさに欠ける。
丸い目にぱっつんとした黒髪の前髪。さらさらとしてとても見ていて癒される。そよ風ってここから流れて来るのかと思うほどだ。
笑った時の笑顔とか俺だけに素直なところとかを知ると、どんな女よりもかわいく見える。
しかも、無防備だ。
一緒に寝てて夜中に目覚めた時、プクリと膨らんだ下唇にそっと指を当てたら、それに引き寄せられてチュウっと吸い付いてきた。
はい、コロリです。
その薄暗い部屋のせいだ、とか、ボウッと白く浮かび上がる肌が悪いとか言い訳を並べながら気付けば啓太の首や鎖骨の下にキスマークをつけていた。もちろん、おいしく唇もいただいた。当然だ。
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