その3、俺の綿密なネリネリ

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次の日、鏡を見て「ムシに食われたのかー」と解釈されて、気付かれなかったことにホッと胸をなでおろした。 笑っている横で夏さんからは意味ありげな視線を向けられた。俺のスルー能力も少しずつ、上がっている。 そしらぬ顔で過ごせた。 『別に同性だからっていう理由で止めたりなんかしないわよ。ただ、あんなむっつりが丸わかりはやめて。  ヘマって泣かせたら殺すけどね』と、夏さんから愛情がたらふく詰まった殺人予告が届いた。 これはそろそろ気を引き締めておかなければと緻密な計画を練ってねってネリネリした。 『隠し場所はクローゼットの奥ね。音から下の方だわ』 えっ、弟の物音を聞いてるのか、すげー羨ましい。 元は夏さんの部屋だった場所を今は啓太が使っている。よって、部屋のつくりを把握している夏さんは的確な分析結果を教えてくれた。 別に探すつもりはなかった。だって、俺もすでに手元に同じ本があるのだ。 それは、運命の出会いだった。 啓太のスマホを借りてゲームをしていたら、画面下に漫画アプリの広告が出てきた。デカデカと『待望の幼馴染月間突入っ!』と丸みを帯びた太文字にふらーっと誘われた。 『あっ、これって啓太のスマホじゃんっ!』って、一瞬焦った天使の俺。 だけど、その後に目に入ってきた画面に悪魔の俺が囁いた。 『幼馴染月間って、俺らみたいに男と男の幼馴染だろ?参考までに、ちょっと寄ってく?』 ...つい、反応してしまい、どんなものかと見ていくうちに染まっていた。ちょっとが、ちょっとではなくなるというお決まりの展開。 BLとは実に奥が深く繊細な描写が描かれているのかと思った。月間には月のテーマが決められており、今月は『幼馴染』。ちなみに、過去には『悲恋』『ヤクザ』『野獣』『緊縛』『下剋上』『オメガバース』など、穏やかではなさそうなテーマに思わず寒気がしたのは言うまでもない。もちろん、子どもまで産んでしまうなんて、ファンタジー。 さておき、偶然出会えた奇跡に感謝し、ネリネリだ。
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