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そんな男がいつものように俺の部屋で寛いでいるときだった。
勇士はゲームを片手にポリポリとお菓子を食べながら遊んでいて、俺は週明けに行われるテストに向けて必死に頭の中に詰め込んでいた。
「...だから言ったじゃん。習った時に覚えておけば、直前は確かめるぐらいでいいって」
ちらりと俺を見た勇士がそれみろと言ってきた。
「...やる気が起きなかったんだよ、仕方がないだろう?」
ボーっと勇士を見ながら集中できずにいる俺は焦る気持ちとは反対にまだ取り掛かる頭スイッチが押せずにいた。
俺の視線に気付いたやつはニヤニヤと企んでいる顔をしながら近づいてくる。
「ン?何、近いんだけ...どっ、って、おいっ」
どさりと押し倒されて両手を頭の上で纏められている。
「...俺さー、面白い物を部屋で見つけたんだよね」
じゃーん!!と自分で言いながら奴は俺がクローゼットの奥の奥の奥の一番下の段の箱に閉まっていた本を取りだし俺の目の前に見せてきた。しかも、俺の腹の上に乗って動けない。
「啓太、こんな本を読むんだな。これってBLだろ?女子が読む奴。あ、男なら腐男子って言うんだっけ?」
ペラペラとページをめくって中身を見る勇士。
拘束されていた手が解放されたから取り返そうとするけれど、手が届かないように奴はわざと俺に中身が見えるように掲げていた。
「...ちょっと、話の先がきになっただけだ。俺は腐男子じゃないっ!」
「でも、これ、幼馴染の設定だよね?」
勇士の指摘にズキリと胸の奥が痛んだ。
言葉につまりながら
「...た、たまたまだろっ、そんな設定は珍しくない。それに、お前はイケメンの部類に入るかもしんねーけど、俺は違うから。そういうのないから」
俺の言葉を聞いていた勇士は本を閉じて机の上に置いた。
「別にそんなことはどうでもいいんだけどな。もしかして、「俺らっていつまでこうやって一緒にいれるのかなー」とか思ったのかなと思って。
で、もっと長い時間、一緒に過ごせるのなら参考までにって思ったのかなって」
―!
的確な分析に思わず言葉を出せずにいた。「イエス」だ。
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