100の春を過ぎたら…

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… 秋になり、いよいよ私の伐採される日が来ました。 先ずは細い枝を切っていきます。 ギュルギュルと音を立てて大きく伸びた枝を切っていきます。 ゆっくりじっくりと私は切り倒されていくのですね。 切られた枝は燃やされ灰になります。他の木に病気がうつらないように燃やすらしいです。 春に私にもう一度会いたいと言っていた人たちが悲しみますが仕方ないですね。 これまで私は幸せでした。 たくさんの賛辞をいただきました。 私を蹴ったりする人も時にはいました。 私の前で愛を囁く人もいました。 私の木陰で休む人もいました。 私の枝を折る人は割と多くて困りました。 私の事を好きだと言ってくれる人がたくさんいました。 全てが愛おしい記憶です。 私がいなくなっても、ここには新しいソメイヨシノが植えられる事でしょう。そしてまた新しい時代を共に歩んで行くのですね。 私はソメイヨシノ。 人の手によって作られたマガイモノ。 植えられたこの場所で100の春を越しました。 私は、私の命はここまでですが、私の兄妹たちが次の時代でも桃色に染め春の息吹を知らせる事でしょう。 【完】
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