100の春を

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… 「ねぇ、貴方。来年も再来年も、これから先ずーーーっと春になったらここでお花見しましょうね♪」 ー私に手を当てて女の人が話しています。ー 「あぁ、勿論だ。君と何十年先も一緒にここで花見をしよう。」 ー女の人の手を取り、私に手を当て、男の人は力強く話していました。…ですが、私にはわかります。この男性には生気があまり感じられないのです。…たまにいます。 “最後にもう一度だけ” 私を見たいと言った女の人は、弱々しい体で私の体を優しく撫でもう1人の人に連れ添われ去って行きました。 その女の人はそれ以来何十年もここには来てません。…彼も、そうなのでしょうか?ー 「…病気をしっかり治しましょう。大丈夫。絶対良くなるわ。私がいるんだもの。また来年、今度は健康になった体でこの桜を見に来ましょう!!」 ーその場で、私の体のそばで少しの間男の人と女の人は抱き合っていました。 “病気”は私たち木にもあります。とても怖いモノです。 病気になった私たちは病気の部分を切られるか私たちそのものを切られるか、そのどちらかです。 人間はどうなのでしょう?ー その後何年先になってもこの2人が私の元に来ることはありませんでした。 …     
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