100の春を過ぎたら…

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… 「…何読んでるの?」 ー私の作る影の中で寝転びながら本を読む男性に、話しかける女性。ー 「…付いて来たの?」 「…ごめん。」 「それ、立派なストーカーだからね?」 ー本を読んでいた男性は本を閉じ、起き上がり、そのまま去って行きます。ー 「…だって、好きなんだもん。」 ー女性の声は男性に聞こえたのでしょうか?振り返りもせずそのまま去っていく男性を追うに追えず、私に触れながら立ち止まってる女性。あぁ…人間はもどかしい。ー 私は自身の体を少し揺らし、立ち止まる女性の目の前に私の葉を食べる小さきモノをポトリと振り落としました。 「きゃ、きゃーー!!虫、虫ぃぃぃ!!」 ー叫びながら男性に向かって突進する女性。背中から突然追突された男性と共に倒れます。 ふふ。最後のサービスですよ。 男性が持っていた本が何かは知りませんが、その本に挟まっていたのは……。ー 「いっってぇ!!」 「あたたたた。ごめっ。ごめんなさ……ん?これ、あたしの写真?」 「!!!」 「え、なんで?」 ーふふ。鈍感な女性ですね。その男性はあなたに恋をしているのです。男性は私の元に来るといつも言っていました。「可愛すぎる。」「素直になれない。」とね。ー 顔を赤くした男性と満面の笑みの女性は仲良く手を繋いで去って行きました。 … 「ここに植えられてそろそろ100年くらいかな。よく、頑張ったね。」 ー私に触れながら、私に話しかける人が来ました。ー 「…残念だ。せっかくこんなに長生きしたのに…。」 ーあぁ。やっぱりそうなのですね。知っていました。私、病気になってしまったのですね。ー 「もっと早期に発見出来ていれば大部分は残す事が出来たのに…。ごめんな。」 ーいえいえ。誰も悪くないのですよ。そう言う運命(さだめ)だったのでしょう。 私は長くここに有りました。たくさんの人、多くの災害を見てきました。 悲しんだ年も辛かった年も、楽しかった年も、私が桃色に色づいたら全てを忘れ、私に夢中になってくれました。ー … 「冬は越えられないと思うから、秋に伐採予定です。」 私に触れ、ごめんと謝ってくれた人が来てから数日、私の周りに作業着の男の人達が囲います。 私の体に布を巻き、私の近くに人が来れないように柵を立てて行きました。これでもう、私に触れる人はいないのですね。
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