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つられて僕もついつい笑ってしまう。
正面を向き合って母と笑いあうなんて、何年ぶりだろう。
親なんか、なんてずっと思っていたのに、思えば母はいつも笑っていた。それなのに、僕は理由もなくそれを鬱陶しいと感じていた。今思えば、それが反抗期ってやつなのか。
「そういえば」
母が表札から僕の方に視線を移した。少し見上げるその顔に、いつの間にか母の背を追い越していたという事にまで、今更ながら気付く。
「美光はもう二百まで数えられるようになったの?」
「は、はあ?」
母は手を口に当てながら、俯き加減に笑い出した。
「だってほら、由人くんとさあ」
「ば、ばか、どんだけ昔の話をしてんだよ」
「あはは、冗談に決まってるでしょ」
そう言いながら、いつまでもけらけらと笑っている母を見ながら、僕はその日の事を思い出していた。
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