触れたい衝動

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触れたい衝動

智也からのメール =========== 玲子、今夜は何時に会える? =========== 二通目。 =========== なんか用事か? ダメになったんなら、 言ってくれればいいから。 心配だから、連絡をくれないか? ============ それだけだった。 今夜は、智也と過ごすって決まっていた。夜からなら平気だって言ったのは、自分だ。 それなのに。 昼間、西に会った。話だけなら、少しの時間で済んだはずだ。近所で済む話なのに自ら進んで車に乗ってスケートまでして、ご飯まで食べた。 必要無いのに、あそこで十分帰ることが出来たのに玲子はそうしなかった。 映画館へ行きスマホの電源を切って、他の男に肩を貸した。 そればかりか、誘われるままにバーへ行き酒まで飲んできた。 ーーー決して、智也との約束を忘れていたわけじゃない。 ーーー覚えていた。忘れるはずがなかった。智也との大事な約束だもの。 頭の隅、いや違う。 心の真ん中で、智也との約束を覚えていた。 覚えていたのに考えないようにしたのだ。 まるで、忘れたように装って今の時間まで無視していた。 玲子は、胸にスマホを抱えた。自分がしたことに泣き出しそうになっていた。 ーーー私は、ひどい女だ。自分の気持ちを見つめればわかる。どんな嘘をついても自分だけは騙せない。 私は……。西と長く一緒にいることを望んだんだわ。だから、智也を無視した。 楽しみにしてくれていた智也の気持ちも無視したんだわ。 私は、とんだ化け猫だ……。 玲子は切れるほどに強く唇をかみしめた。
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