17人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
触れたい衝動
智也からのメール
===========
玲子、今夜は何時に会える?
===========
二通目。
===========
なんか用事か?
ダメになったんなら、
言ってくれればいいから。
心配だから、連絡をくれないか?
============
それだけだった。
今夜は、智也と過ごすって決まっていた。夜からなら平気だって言ったのは、自分だ。
それなのに。
昼間、西に会った。話だけなら、少しの時間で済んだはずだ。近所で済む話なのに自ら進んで車に乗ってスケートまでして、ご飯まで食べた。
必要無いのに、あそこで十分帰ることが出来たのに玲子はそうしなかった。
映画館へ行きスマホの電源を切って、他の男に肩を貸した。
そればかりか、誘われるままにバーへ行き酒まで飲んできた。
ーーー決して、智也との約束を忘れていたわけじゃない。
ーーー覚えていた。忘れるはずがなかった。智也との大事な約束だもの。
頭の隅、いや違う。
心の真ん中で、智也との約束を覚えていた。
覚えていたのに考えないようにしたのだ。
まるで、忘れたように装って今の時間まで無視していた。
玲子は、胸にスマホを抱えた。自分がしたことに泣き出しそうになっていた。
ーーー私は、ひどい女だ。自分の気持ちを見つめればわかる。どんな嘘をついても自分だけは騙せない。
私は……。西と長く一緒にいることを望んだんだわ。だから、智也を無視した。
楽しみにしてくれていた智也の気持ちも無視したんだわ。
私は、とんだ化け猫だ……。
玲子は切れるほどに強く唇をかみしめた。
最初のコメントを投稿しよう!