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務めていた会社が脱税していました。
コンプライアンス違反には厳しい業界でしたので、信用を失った会社は仕事を受注できなくなり、やがて倒産に至ります。
幸い、私はその時にやっていた仕事のつながりで、倒産直前に別の会社で拾ってもらえましたので、退職した翌日には転職していました。
新しい会社では、社員管理の為にスマホアプリとか使っていました。
それまでガラケーしか持ってなかった私は、やむを得ずiPhoneの購入に踏み切りました。
通勤時間が片道2時間程度というところにスマホ入手です。
何か安く楽しめるものはないかと探していた私は、小説家になろうというサイトを発見し、すぐに沼にハマるように、ずぶずぶと沈んでいきました。
そしてたくさんの小説を読んでいる内に、こういうのなら自分でも書けるのでは、という根拠のない思い込みをします。
気付けばテキスト入力が辛うじて可能な激安ノートパソコン(新品3万円程度)をAmazonさんで購入していました。
それからしばらくの間、私はパソコンに触れませんでした。
道具を買っただけで、何となく満足してしまうという悪い病気が出てきたのです。
変化があったのは、会社の健康診断の結果が出た後でした。
血糖値がとんでもない数値をたたき出しており、この状態でインフルエンザにでも罹ったら、命の保証はできないと医者に言われた私は、その翌日には入院していました。
病院で暇を持て余した私は紙のノートを買い、プロットとも言えないような文章を書き始めました。
そして二週間後、退院した私は、ノートパソコンを起動して小説を書き始めました。
最初に書いたのは、小説というよりも幾つかのシーンでした。
それを繋ぎ合わせ、順番を変え、どうしたら自分が楽しめる小説になるかを考えては手を入れていきます。
想定読者は1名。自分自身だけでした。投稿なんて欠片も考えていない私でしたが、自分で、いい出来になったと思えるようになってくると、第三者の目で意見が欲しいという欲求が高まってきます。
そんなとき、小説家になろうのサイトで、ある賞が開催されました。
賞に応募すると感想が貰えるという話を聞いた私は、感想欲しさのあまり、小説を投稿して賞に参加していました。
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