四章 技術の問い

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そして、何度も現れる得体の知れないもの。 まるでライオンと対になって俺を攻めてくるようだ……。 西園寺さんから得体の知れないものの話を聞いたときは、まさかと思ったが、 実際に得体の知れないものの存在を肌で感じて、その不気味さを身をもって知った。 システムエンジニアの敗北は得体の知れないものに飲み込まれたとき……。 俺は机の奥にずれたパソコンを手前に引き寄せた。 写真にはたくさんのタワー状の黒い塊が写っていた。 黒い塊の奥で赤いランプと青いランプが光っている。 肌に冷たい空気を感じる。 赤い目と青い目のライオンが檻の中で俺を手招きしているようだ……。 檻が突如巨大化する。 システムが巨大化する。 この状態……俺が小さいのか? ライオンが俺を踏み潰そうとする。 俺は書類を睨む。 書類に繰り返し書かれている『ライオンは二十四時間無停止』という言葉が光った。 ライオンがまた書類に戻った。 文章の意味が通る。 ライオンの理解が高い地点にまで達した。 大事なことは繰り返し書かれているこの『ライオンは二十四時間無停止』ということなのか? 書類には繰り返し『ライオンは二十四時間無停止』と書いてあった。 俺は書類に書かれている『ライオンは二十四時間無停止』という言葉が、体を通って全身に広がった感じがした。 俺はライオンを理解した? 書類に書かれた大筋が浮き彫りになった。 端々には分からないことがある。 しかし、ライオンについての大筋はもう人に説明できるまでになった。 ライオンが大人しく檻に下がったのを感じた。
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