四章 技術の問い

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得体の知れないものももう俺の足を掴んでいない。 ライオンとも、得体の知れないものとも長い戦いだったように思える。 俺は書類の大筋を大体掴んだ。 黛課長がちらとこちらを見た。 「朽木、午後から初の顧客訪問。先方に失礼の無いようにな」黛課長が大きな声で言った。 「分かりました。決して先方に失礼の無いようにします。ありがとうございます」俺は黛課長に答えた。 「少しぐらい失礼があっても俺はいいぞ」西園寺さんが俺の右肩を拳で叩いた。 「はははは」俺は笑いながら内心、西園寺さんの言葉を絶対失礼があったらいけないという意味に捉えた。 「昼は外で食うから社内の弁当は買うなよ?」西園寺さんは箸を動かす真似をしながら言った。 「分かりました」俺はいつもの通り、分かりましたしか言っていないことに気づいた。 俺は腕時計を見た。 腕時計は十時半を指していた。 あと少しの時間で、残りの課題……俺の弱点の克服をする。 俺はそんなに簡単に弱点を克服できるのか疑問が湧いた。 そして、弱点をどうやって克服するのかも……。 俺の弱点はたくさんある。 そのうち一つでも克服したい。 でないと、今後致命的な問題を招く気がする。 やはり一番やっかいな問題は一番後に来た。 いつもそうだ。 俺はやっかいな問題を後回しにする。 やっかいな問題を後回しにするのも俺の弱点と言える。 後回し癖……。 今日の午前中の間だけでもやっかいな問題を後回しにしないようにする。 俺が出来ることはそれぐらいに思えた。 「すみません、上代さん。何か分担出来る仕事は何かありますか?」俺は上代さんに聞いた。 「分担出来る仕事?そうね、ライオンの書類は読み終わったの?」上代さんは両手で四角を作った。
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