四章 技術の問い

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「はい、読み終わりました。分担出来る仕事が何かあればと思ったのですが」俺は自ら仕事をしようとした。 やっかいな問題が来る前に自分から問題に突っ込んでいく。 俺が後回し癖を克服するには、先回りして仕事をもらう。 山道を一段登る。 弱点から一段上がる。 「じゃぁ、隣の課の桐生さんが午後からの打ち合わせに一緒に参加するはずだから、顧客先まで一緒に行くか、それとも別に行くか聞いてきてくれる?」上代さんは言った。 「分かりました」俺は鞄から座席表を出し、桐生さんの座席を確認した。 桐生さんの席は宗像さんの二つ左。 桐生さんは短髪で紫のシャツを着ている。 今は誰かと話をしている。 相手は別の部署の人だろうか、微妙な間だ。 俺は上代さんに頼まれたことを後回しにしないように、すぐに席を立った。 廊下を進み、一列奥の席を目指す。 話が終わったのだろうか、桐生さんの話し相手がこちらに近づく。 特に会釈もなく、俺の横を通り過ぎる。 俺は桐生さんの机の横に立った。 「桐生さん、新しく配属になった新人の朽木です。上代さんからの依頼で午後の打ち合わせに一緒に行くか、別に行くか確認をしに来ました」俺は桐生さんに言った。 「おー、おーおお。朽木くんか?俺は仕上げたいことがあるから、別に行くと上代さんに伝えてくれ。現地で合流するよ」桐生さんは右手をゆらゆらと動かした。 俺は頷いた。 「それと、仕事を一部分担してくれてありがとうと伝えてくれ」桐生さんは左手でパソコンを掴んだ。 「分かりました。そのように上代さんに伝えます」俺はまた頷き廊下を進み、自席に戻った。
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