四章 技術の問い

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俺たちは氏家課長に促されて、オレンジの椅子に座る。 「今日はライオンの……、失礼。リライオンシステムの性能調査の打ち合わせだったね?」氏家課長はペンケースからペンを取り出しながら言った。 「はい」西園寺さんは氏家課長に答えた。 俺は西園寺さんの言葉を思い出した。 『今回のライオンの性能調査は、ライオンに問題があるから調査するのではない。ライオンに問題が無いから調査する。朽木はこの二つの違いが分かるか?』 俺は西園寺さんに二つの違いは分からないと答えた。 西園寺さんは俺に打ち合わせでその問題を考えることだと言った。 どうしてライオンに問題が無いから調査するのか? 俺はテーブルに手帳を置いた。 西園寺さんは氏家課長に打ち合わせの趣旨を伝えた。 ライオンが動き出した今、改めて性能に問題がないことを調査するそうだ。 氏家課長は西園寺さんの言葉を聞き、満足そうに頷いた。 「今回は、桐生に調査のプログラムを仕込んでもらいます」西園寺さんは言った。 「調査のプログラム?大丈夫ですか?」氏家課長はきょとんとした顔をした。 「はい。病院で行う採血のようなものです。他社で実例がありますので大丈夫です」西園寺さんは答えた。 病院で行う採血? つまり、ライオンから採血をするということか? 実際にはライオンからどんなものを抜き取るのだろう? ライオンの性能調査は工事ではなく、採血だった。 「なるほどね、実例があるなら大丈夫ですね?」氏家課長は念入りに聞いた。 「他社でも問題が起きたことはありません。十分に実例のあるプログラムです」桐生さんが答えた。 桐生さんはプログラムの説明を始めた。 俺は何だかよく分からない言葉を聞いているようで、少し眠くなった。 「分かりました。で、どんな手順でやるの?」氏家課長はノートを一枚めくった。 「ライオンの性能調査をどうやるのかの手順は、朽木から説明します」西園寺さんはそう言いながら、プリントを配った。 西園寺さんが俺が読む場所を指し示してくれた。 来た。 俺の顧客先での初仕事……。 俺は咳払いをして、口の筋肉をほぐした。
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