四章 技術の問い

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四章 技術の問い

俺は居酒屋の前に立っていた。 隣には忍がいる。 忍の提案で会社の近くの居酒屋に来た。 扉にはのれんがかかっており、チェーン店の名前が書かれている。 俺はあまりお酒を飲めないが、つきあいなら喜んで飲む。 忍との飲み会は研修以来だ。 俺は研修以来に溜まったことを忍と共有したいと思った。 忍は扉を開けた。 中は全員サラリーマンじゃないかというぐらい、スーツ姿の客で混み合っていた。 「お客様、二名様?」 厨房から声を掛けられる。 店主だろうか? 「はい。二人分、空いていますか?」忍が返事した。 「今ちょうど、会計が終わって二名様の席が空きます」 俺たちは店の奥へと入った。 忍がテーブルの奥に、俺はテーブルの手前に座る。 ウェイターに注文を聞かれ、生ビールを頼んだ。 忍は何か話したいことがあるのだろうか? 何かに悩んでいるという感じではない。 会社のことを気軽に共有したいというところだろうか。 忍がおしぼりで手を拭く。 「篤海くん。昨日今日とどうだった?」忍が聞いた。 忍は昨日今日とどうだったのだろう? 俺は色々なことがジェットコースターのように過ぎ去って、正直一つ一つのことを吟味する余裕は無い。 一番記憶に残っているのは、俺に弱点があるということだ。 俺に弱点があること以外は、全て俺の弱点の上に立ち並ぶことだ。 「俺は昨日今日と皆についていくのがやっとだった。忍は?」俺は忍に聞いた。 忍はウェイターから生ビールを二つ受け取った。 一つを俺に渡してくれた。
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