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そうして"それ"を彼の足元に投げやった。彼がビクッと身体を跳ねさせ、目線をやると
──上下セットの体育ジャージが乱雑に広がっていた。
「…っえ?…あの、これ」
彼が目をパチパチさせ、期待と戸惑いを表情に出す。だが、真は首を傾げニタリと怪しく微笑む。
「…5万」
そう、言ったのだ。追いつかない展開と焦燥感が増していく彼にこの意味が分かるか…いや、もはや本能的に察してしまった。手元に無い、親に何て言おう、そんなの多すぎる、そんな考えが体を巡る。
冷や汗をかきそうになり、もじもじとどうしようかと手の指先の爪をカリカリし始める、すると真が口を開いた。
「ネー…あと3分しかないよ?せっかく人が優しーくしてあげてんのにナニしてんだよ、さっさと着替えろよ」
その彼の動作にイラついた真は、舌打ちを混じえて嫌々な顔でスマホの画面の時間を見せる。
「…っ!!間に合わない、!ごめんなさ…っ、わ、わかりました…!」
彼は大きく瞳孔を大きくすると、地面のジャージを拾って不器用ながら着替える。真は、一瞬怪しく口角を上げるが、すぐに冷ややかな表情に変わりゴミを見るような目で見下ろしていた。
「後いっぷーん…」
「っ、……っ……!」
彼は今にも涙を流しそうな形相で、着替え終わると真に一言「ありがとうございます」と言うと、おぼつかない足で体育館へ走って行った。
真はすれ違う時に「ア、それ返さなくていーから。汚いし」と睨んで告げたのであった。
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