異状

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◆ 真と舞美が別れた次の日、真は同じクラスの後ろの席に座っている森下に話し掛けていた。どうやらその内容はまた"お財布"に関係するようだ。 「ねーおチビちゃん、ジャージまだぁ?」 真が自分の席に来るだけで森下は身をすくめてしまうが、さらにこの内容を突かれるとビクリと肩が震える。 「…あ…あした、届きます」 でももう大丈夫、免れると思っていた。何故なら真にジャージセットを借りて…いや、貰ってから明日ようやく新品の形で返せるのだから。 そんな希求も込めつつ、そう返答したら真は下を向いている森下の目線の先に、てのひらを見せる。 「じゃ、延長金」 付け加えて言われると思いもよらず「エッ?」と声を漏らし、見上げて真の顔を見る。 「延長金だよ。だってホラ、きょーも体育あんのにあんたが返してくれないから」 いつもの余裕気で、怪しい表情、口調だった。森下は真の機嫌を逸らさないように、こうしてよく様子を見る癖が付いてしまったようだ。 この場合は、お金を渡さないと機嫌を害し、何か弱みを握ってくるだろう。そう察知した森下は仕方なく鞄からとりあえず財布をコソコソと取り出し、所持金を一目見てから2000円取り出した。 「…あの…これ…で」 おそるおそるその差し出された手に渡すと、真は受け取らず冷ややかな目で見下ろした。
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