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電車でうたた寝をしながらも采美高校に着くと、体育館に移動してウォーミングアップを始める。
今日も皆気だるそうに、何やら話をしながら締まりのない準備をしている。
会話の内容はまた、あの『噂』の話だった。入学式があり新入生が来て少し経った頃から、その新入生の中のある生徒の噂が学校で密かに話題に立っていた。
同学年2人で噂話してたため、雷司も何となく混ざり耳をたてながら相槌をうっていった。
「…そいつさ、入ってきたばっかなのにピアスも空いてて……3年に彼女居るんだって」
「え?マジ?…誰!」
「…聞く?ヤバいよ」
…と、肝心な所で隣の方に耳打ちをして、雷司の方には聞こえなかった。された人は、目を大きくして高揚した様子だ。
目が合って、お前も聞く?と言ったような顔をされたが、ちょうど体育館に誰かが訪れる。
「…あ、永野、おはよ」
雷司が振り返って見ると、部活マネージャーの中で1番可愛いと言われてる3年生の永野舞美が来て、いつものように日誌に誰がサボってるかチェックするように書く。
「おはよー」
舞美が来てそう挨拶すると、そのルックスを見て癒されようと男子が風のように走って集まる。
明るい茶髪のサラサラとしたセミロングを緩く結んで、瞳はパッチリと大きく長い睫毛。スタイルも良くて目の保養といったところだ。
だが、些細に場の様子が違った。それはさっき噂話をしていた彼らだ。
少し距離を離して、舞美を見る度ニヤニヤとしてあからさまに不自然だ。
雷司は、話を関連させて察した。舞美が、その噂の生徒と付き合ってる彼女であることを。
そして舞美本人にコソコソしてる事を気づかれ、怒られる前にと早足に練習を始めた。
…それはそうとして、別に誰と誰が付き合おうが問題ないじゃないかと雷司は思いつつ、だがここ最近噂ばかりされていて何か他にもその理由があるのじゃないかとたまに気になるのであった。
舞美は、女性のβだ。ならば彼氏の方はβ、もしくはα…。Ωはそもそもありえない。
つらつらと考えながら朝練をしていたら、時計の針はショートホームルームが始まる頃になっていて、急ぎ足で教室に向かうのであった。
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