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みんな自由にそれぞれ立って話したり寝たりして、別に気にすることではないが、何故か目に入った。明るい茶髪のポニーテールが揺れる。あれは─永野だ。
…と、隣で話しているのは赤のラインの入ったジャージ…1年の男子生徒だ。
ちょうど前のクラスメイトが座って伏せ寝をしてて、彼女らの様子が結構見える。
隣りの彼は…黒髪で襟足が刈り上げられていて、体育なのにピアスをつけたままだ。加えて、それで判断した。彼が舞美と付き合っている噂の1年生だと。
そして随分と仲良さそうに喋っては、さらに力比べでもしているのだろうか、舞美から彼の手を取って、手を重ね握り合いっこしている様子だ。
雷司は(あーあお熱いコト…あれじゃ噂どころかバレバレじゃん)と思いながら、他人事だがジト目で見てしまう。
─すると、見過ぎていたのか1年の彼氏の方が雷司の方に目を向け、たぶん「先輩に見られてるよ」と口を動かした。雷司はハッとすると再び紙に目を移して紛らわそうとした。
だがすぐに誰かが側に来て、頭上ら辺で話しかけられた。
「もぉー雷司見てたの?…言わないでね」
と、舞美本人がまんざらでもないような頬を色づけ困った顔でそう告げて元の場所に戻り彼と話を再開した。
あの顔は恋をしている顔だ。相当彼が好きでデレデレな時期なのだろう。
懲りずに紙越しからチラリともう一度見てみれば、クスクスと「大丈夫?あの人言ふらしそー」と笑いながら言う失礼な彼に「言わないって!…分かんないけど」と答える彼女。…全部聞こえてるっつーのと呆れそうになる雷司は、前のクラスメイトを起こしてお喋りでもしようと気を変えるのであった。
…それよりも、さっき一瞬合った紫の目色が忘れられない。怪しくて、若々しい紫。
一言で例えるならば『奇麗』だった。
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