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「なんですか。」
「いや…。」
居心地が悪かったのか、不機嫌そうな目をして俺を見た。
俺はキッチンで簡単な物を作って、テーブルに置いた。
「ほら、夕飯。」
「食事は不要です。生命維持は必要ありませんから。」
「そうかよ。」
取り皿と箸をさげようととすると、その手を掴まれた。
「食べます。」
「必要ないんだろ?」
「食べます。味はわかるんです。」
「わかったわかった。」
少し前まで、こうやってナギサとテーブルを囲んでいた。これが、当たり前に続くと信じていた。
「あなたが残り1ヶ月をどう過ごそうが自由です。何度も言いますが、地球は滅ぶ。確実に。」
「でも死ぬことは許されてない。」
「ええ。その通りです。」
「究極の選択だな。この歳で迫られると思ってなかったよ。まだ20だぜ?」
「私は、20で死ぬと思ってませんでしたよ。人生なんてそんなものです。何もかも予想外で理解不能。地球が滅ぶなんて、誰が予想しましたか?」
「誰も、予想なんてしてなかっただろうな。」
誰もが明日を信じる。
どんな明日だろうと、来ると思っているから楽しみになるし、悲しくなる。
明日、命が無ければ今日を悲観する必要なんてない。
「私は、あなたと…」
「ん?」
「いえ。何でもありません。できるだけ早く結論をお願いします。」
「わかってるよ。」
わかってる。
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