彼女と人類保存計画

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「さぁ、早く。」 見慣れた小さくて白い手を俺に向ける。 「…お前、誰?ナギサじゃないだろ。」 「私は、ナギサですよ。ミヤビ」 「そんなわけない!だってナギサは…」 「死にました。ですが、私は紛れもなくナギサです。」 意味がわからない。 「そんなことよりも早く、私たちと共に行きましょう。」 「…行かない。ナギサが生きてるってことも信じないし、そんな怪しげな話も聞きたくない。」 「まぁ幸いにも、まだ時間はあります。じっくり考えてください。それと、ナギサが生きているなんて誰が言いましたか?」 「え…?」 「確かに私はナギサですが、ナギサが生きているなんて一言も言っていません。確かにあの日、私は死にました。あなたは私に、キスしたではないですか。」 だったら、お前は本当に… 何者なんだ…? 「そ、そもそも!人類保存計画ってなんだよ!」 「あと1ヶ月後、地球は滅びます。」 明日の予定を話すように、軽く答えた。 「そのため、政府は強い人間のみを一時保存するため宇宙(ソラ)に飛ばす計画をしています。あなたは選ばれた人間なのです。」 そんなの、ニュースでも何にも… 「そんなことを人々に告げれば、権力の強い者のみが生き残る結果になりかねませんから。そんな無利益なこと、意味がありませんから。」 俺の気持ちを読み取ったように、淡々と答える彼女が少し怖かった。 「…百歩、一万歩譲って、その話が本当だとしよう。」 「百も何も、全部事実です。」 「もし俺がその人類保存計画を拒否したら、どうなんるんだ?」 「死にます。他の人間と同じように。」 「なるほど」 「あまり驚かないのですね。」 「妥当な答えだろ。他にも対象者がいるなら、別に俺じゃなくてもいい。」 「ええ。別にあなたでなくてもいい。」 「考える。1ヶ月あるんだろ?」 「そうです。でも、」 彼女は薄く笑った。 俺の好きな、ナギサの顔で。 「1ヶ月は、意外と短いのでお気を付けて。」
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