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 私は謝罪を繰り返したが、人魚姫は黙ったままだった。口を微かに開いて、しかしそこからは何の言葉も紡がれない。ただじっと私の顔を見上げている。私は改めて彼女の全身を眺めた。作り物みたいに真っ新な白い足に目が止まる。ああ、そうか。すとんと理解が胸に落ち、私は頷いた。 「ひょっとして、喋れないの?」 「……」 「その足、あなた、その足を手に入れたから。だから引き換えに声をなくしちゃったの? 悪い魔女に騙されて。そうなんでしょう」  やっぱり人魚姫は何も言わない。首を横にも縦にも振らなかった。でも微かに笑ったように見えた。私はそれを肯定と受け取った。 ではあの歌声は失われてしまったのだ。そう思うと冷たい風が吹き抜ける寂しさに襲われた。あれから何度も何度も頭の中で再現しようとしてみたけれど、どうしても一節さえも思い出せなかった彼女の歌。発作が起こる度に歌が欲しくて、渇いて、仕方なかったというのに。 気がつけば私は彼女に向かってうちにおいで、と口にしていた。人魚姫はまた微笑んだ。だから今度も肯定だろうと受け取った。  私は自分の着ていたレインコートを脱いで彼女にかぶせた。小さな子どもにしてやるみたいに袖を通させて、上から下まで丁寧にボタンを閉めてやる。着せ替え人形みたいにされるがままでいた彼女の小さな体は、やがてすっぽり覆われた。てるてる坊主みたいな風采になった人魚姫を見て私は満足した。     
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