第1章 だから嫌なんだよ

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「モグモグ。やっぱり評判通り!美味しいね。このケーキ」 橘さんの気になるお店というのはやはり駅前に出来たこじゃれたカフェだったか。 甘いもの好きの橘さんのことだ。 必ずここに目をつけると思っていた。 「しかし、まさか高橋くんがここの割引券持ってるとはね。奢るって言ったのに何だか私が奢られた気分だよ」 そう、高校生である僕らのお小遣いなんてたかが知れている。 だからこんなところで奢らされて、橘さんのお小遣いが無くなったりなんかしたら困る。 彼女には僕以外のところでお金を使ってもらい、世の中にはもっと有意義なお金の使い方(高橋なんかに使う金は一円もない)ことを知って貰わなければいけないのだ。 だから僕は事前にカフェのビラ配りをしているところに何度も通りすぎ、10枚ほどの割引券を手にいれていたのだ。 そんなことを考えながらにやけていると、フォークを口に加えたまま橘さんがこっちを見ていた。 「あっ。もしかして高橋くん。わざわざ私のためにこんなに割引券集めてくれてたの?」 「ぶっ!!な、何を言ってるの?」 僕は飲んでいたコーヒーを吹き出してしまった。 それを見た彼女はあわててポケットからハンカチを取り出し、躊躇なくテーブルを拭いてくれた。 「違かったらゴメンね。自信過剰だと思ったでしょ。うん、私もそう思う...。でも、もしそうだとしたら薄々気づいているのにお礼を言わないのは申し訳ない気がして...」 「いや、そうだよそう!橘さんのために割引券を集めてたんだ。だから自信過剰なんて思わないで」 僕の言葉に橘さんは満面の笑みで頷いた。 「ありがとうございます!高橋くんのそういうところ。私本当に尊敬してるよ」 は~あ。 どうしてこうなっちゃうんだろうか。 いつも僕の行動は裏目に出てしまう。
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