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「先輩、諦めて俺の恋人になってください」
おかしい、おかしい。
あまりにも理不尽な物言い。
普通ならキレて当然なのに。
どこか危険漂う空気に、私の顎を少し強引に持ち上げる手つき。
さらには色っぽい眼差しに、甘さを含む声。
何を思いとどまっているのだろう。
断れ、自分。
そう思っているというのに。
「……わかった」
肯定の言葉が口から出てしまう。
自分の馬鹿。
一瞬でも心揺らいでしまった自分が悔しいけれど。
それ以上に、その気持ち以上に、欲しいと思ってしまったから。
「じゃあ今から先輩のこと、食べていいですか?」
嬉しそうに笑う彼は、思い通りになった私を優しく、丁寧に扱ってくれた。
とびきり甘くて、クセになるような、そんな時間を私たちは過ごした───
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