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 とういん…?ということはここは何かの病院で、目の前の男は、医者なのかな。白コートじゃなくて、白衣なんだ。 「あの、その、ごめんなさい。私、何も分からないんです。あなたは誰なのか。ここはどこかも。」  そして、私自身のことも何も思い出せなかった。医者の話によるとついさっまでは普通だったのだろうけど、本当に何ひとつ覚えておらず、不安で押し潰されそうだった。 「や、これは困ったなぁ。うちは脳に関しては専門外だからな。精神科や脳神経外科にも紹介できそうな知り合いはいないし…本当に何も覚えていらっしゃらないのですか。」  私はごめんなさいと言い、俯く以外他になかった。医者の男は苦虫を噛み潰したような表情をしながら、うーんと唸りながら頭を掻いている。そんな顔されても、こっちだって困る。 「あ、そうだ。自分の名前は流石にお覚えでしょう。あなたのお名前お聞かせ頂いてもよろしいですか。」  …さっきから何も覚えていないって何度も言っているのにこの医者ときたら。全然理解してくれない眼前の男に流石に堪忍袋の緒が切れそうになったその時、男が机に置いてある書類に視線が移った。そこの一番上の欄に『氏名 浜園 穂伽』と書いてあった。これが、私の名前だろうか。 「はまぞの…ほのか…?」     
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