1.9度目

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「でも、貴方も佐渡先生の元で学べるなんて光栄でしょう。今でこそこんな小さな病院を経営されているけど、昔はかの有名な大学病院の教授だったんでしょう。まだあんなにお若いのに。」 「え!!あの人がですか!?」 「なに、貴方。先生のとこに勤められているのに知らないの?ここに来る人のほとんどは、その先生の評判を聞き付けて遠くからわざわざ受けに来るのよ。元教授というだけあって腕も確かだし、大きい病院より診察料も安いのよ。大きい機械がないから、本格的な治療は余所でしかできないけど、良い所を紹介してくれるし…」  自分の知識をひけらかすのがさぞ快感なのか、お婆さんはベラベラと先生を自分の息子の如く褒めちぎる。あまりに長いので途中から聞き流していたけど、まさかあの強姦男がそんな凄腕の医師だとは思わなかった。  そんな人が何故、落ちぶれてこんな小さな産婦人科を経営しているのだろう。きっと悪いことをして、追い出されたに違いない。私の時みたいに己の性欲のままに誰か襲ったのがバレたのだろう。最低なクズ野郎… 「浜園さーん!!ちょっとこっち来てもらっていいですかー!!」  静まりかえった病院に先生の呼ぶ声が響き、皆一斉に診察室の方へ振り返る。そんな大声出さなくても聞こえるのに、つくづくデリカシーがない人だなと思い呆れ返る。とはいえ、お婆さんの長話に飽々していた所だったから、私は失礼しますと言って足早に室内へ向かう。  また大声を出されでもしたら不愉快だ。
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