2.5度目

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「ほとぎ。」  驚いた。無理だろうと思っていたけど、まだ口がきけるらしい。 「へー、ほとぎちゃんか。いい名前だなぁ。あ、俺のことはまーって呼んでくれればいいよ。」  名前が知れたことが余程嬉しいのか。少年は爽やかな笑顔で聞かれてもいないのに自分の名前、しかもあだ名を勝手に名乗りだす。  この子、この幽霊みたいな女の子のことが気になるのだろうか? もしそうなら、確かに物好きな奴と言われても相違ないと思ってしまう。こんな面白みの欠片もない置物のどこがいいのやら。 「…よくない。私、この名前嫌い。」 「どうして? 凄くいい名前なのになぁ。」  それなら名字の方を教えればいいのに。ほとぎっていう名字は無いだろうし、何故嫌いな名前をわざわざ教えるのか理解に苦しむ。素っ気ない素振りをするくせに、かまってちゃんというやつなのだろうか?  何故だろう。この子を見ていると無性にイライラする。幽霊になっても怒りという負の感情があるなんて、思ってもみなかった。同類じゃないと分かり、裏切られたからだろうか? 「だって、私はこの名前のせいで…」  急に世界が暗転し、何も見えなくなった。  足場に地面の感覚が無くなり、私は奈落へ落とされる…
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