2.5度目

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「ん、う…んっ、まぶし…」  闇から覚めた私は、辺り一面に広がる眩い朝の光を当てられ、しかめっ面で起きる。朝日は私が無事向こう側から生還できたことを祝福するかの様に、もやもやとした光の束のスポットライトを浴びせてくる。この埃の舞い具合から察するに、長いことうなされていたみたいだ。 「なんだ。生きてるんだ。私。」  夢から覚めた私は照りつける太陽を憎々しげに睨み付ける。あのまま夢の中に入れば、こんな地獄ともおさらばできたのに、余計なことをしてくれたもんだ。  いつの間にか昇っていた朝日を、これまたいつの間にか仮宿で迎えた私は、自分の服装を見て白衣姿ではなく、男物であろう部屋着に変わっていることに気付く。先生に犯され、何度も達した後意識を失ったはずだから、ここにいるのも、楽な服装でいるのも全て先生の仕業なのだろう。放置されるよりはマシだけど、あの男にありとあらゆる所を触られたというのは不快極まりない。  私は汚れ物を扱うように着せられた部屋着を脱いでは遠くに放り投げ、シャワーに直行する。最悪な目覚めを少しでも和らげようと少しだけ温度を高くする。頭から打ち付けるお湯が気だるい体を癒してくれ、あのまま夢の中にいれたらという考えが徐々に薄れていく。  やっぱり、生きているのはいいことだ。  こんな最低な毎日でも。  熱めのシャワーですっきりした私は、数ある男物の服から濃い青色のデニム生地の服一式を取り出し、素っ気ない白地のTシャツの上にジャケットとして羽織る。  どう見ても女性の格好ではないと思うけど、他の服よりは幾分かマシだと思う。おかしい所がないか風呂場にしかない鏡で入念にチェックする。シャワーを浴びている時に思い出したのだけど、今日は今後の人生を決める大事な日なのだ。  昨日落ちてしまう前に先生はこう言った。 『明日は病院は休みだ』と…  事実時計の針が午前10時を刺そうとしているにも関わらず、昨日みたいに先生がドアをノックしに来ない。どこかで見張っているかもしれないが、そんなこと気にしていたら何もできない。  遥か遠くに見える街に行き、交番に行く。そうすれば、後は警察の手で先生は捕まり、私は自由になれるんだ…    ドアを開けて、アパートの周囲を何周も回って、先生の車らしきものが無いか入念に確認する。辺り一面田んぼのため、車を隠せる様な障害物は何も無い。アパートの駐車場にも車は一台もない。と、なれば…遠くに見える街に向かって走り出す!!
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