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第1話 狐の嫁取り
「──狐狗狸さん、狐狗狸さん……おいでください」
薄暗闇が漂い始めるころ、何処かの教室で呟かれる呪い言葉。
今では誰もやらない遊び──古い古い、占い遊び。
占いというのはおまじない。おまじないは、お呪い。
呪いは呪術。呪術とは、超自然的な方法によって意図する現象を起こそうとする行為。善きことも、悪しきことも起こす。
呪いは諸刃の剣。知識も覚悟もない人間が行ってよいものではない。
けれど、名を変え品を変え──力の足りないおまじないは生き続けている。
「エンジェル様、エンジェル様。教えてください」
「キューピッド様。いらっしゃいますか?」
「分身様、分身様。わたしの恋は実りますか?」
「キラキラ様。あの人はわたしを好きになってくれますか?」
「守護霊様、守護霊様。おいでください」
どんな名で呼ばれようと、呪術には変わりない。名を変えて、如何にも親しみを持たせて、寝首を掻く。
他愛ない恋愛話をしているだけならまだ引き返すことも出来よう。
「狐狗狸さん、狐狗狸さん……あの子に何か痛い思いをさせてくれませんか?」
「私の邪魔をする奴なんて、死ねばいいのよ」
「邪魔なあいつを懲らしめてください」
誰かの不幸を願った時──……呪いは発動する。
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