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──────……
「チャイム鳴ったぞー。席に着けー」
朝、教室に顔を出したのは副担任の男性教師だった。
「あれ? 先生は?」
いつもと違う朝に、クラスメイトが困惑する。
「先生は今日はちょっとお休みされてる。しばらくは僕が担任になるからな」
副担任の言葉を聞いて、萌那は少し落胆した。あの夢のあとの、現実の担任の顔を見たかった。休みじゃつまらない。
一回だけのお仕置きじゃ足りない。今日も夢でお仕置きしようか。 真夜中の樹海に連れて行って、何か動物とかに追い掛けさせようか。北海道には熊が居るというから、熊と戦わせてみようか。
クスクスと、嗤い声が漏れないように──……
純粋な悪意。無邪気な感情。膨らむ。膨らむ。現実は楽しくない。つまらない。
夢の中でなら、神様になれる。思いのままに振る舞える。
あぁ、妄想って本当に楽しい。
友だちなんか要らない。
私にはこの世界があればいい──……
しばらく、平穏であるような、平穏でないような日常を過ごしている中で飛び込んできたニュース。
『──次のニュースをお伝えします。先月から行方不明になっていた小学校教諭の女性が、富士山麓の青木ヶ原で遺体となって発見されました。遺体は損傷が激しく、DNA鑑定の結果特定されました』
日常の中の、他人事の事件。当事者以外はあくまでも自分たちの日常を崩すことはしない。有り触れたひとつの事件に過ぎない。
『次のニュースは──……』
私に酷いことをした奴らは、みんなみんな殺してやる。
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