第1章 「地獄の蓋」

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第1章 「地獄の蓋」

羽根の回る音が煩く響く。 ガタガタと不定期に振動が身体を揺らす。 談笑をしている者や手紙を書く者、目を閉じて静かに待つ者、1人で黙々と銃の確認をする者など様々な行動をしている。 皆、緊張が故の行動であると誰から見ても分かるだろう。 前の方にいた指揮官が立ち上がり、こちらを向く。 指揮官 「本作戦の目標は研究施設の破壊と科学者ゲイリー・ブラウンの捕縛又は排除である!! 事の発端は忌まわしき5年前の血の惨劇に遡る! アメリカのコキオディバーソンにある遺伝子操作を主とした会社“グラーティア”が私利私欲に生命を弄び、利益独占の為、イかれたゲイリーの研究を奪うだけでなく、退職まで追いやったのが原因だ! あの狂人が復讐で放った生物兵器の所為で、街に住んでいた44万人の命が失われた。 その後は封じ込めに失敗し、世界中に広まり、より多くの人々の命が奪われた。 テロリストの兵器としてよく使われるようになったこの時代、我々は有志として世界中から集められた最後の砦である!! 人種・性別・年齢・過去も関係ない! 皆、バイオテロを憎む者達である!!!」 一呼吸し、指揮官は全員を見渡す。全員、目の中に確固たる強い意志があるのが分かる。 やがてそれに満足し、言葉を繋げる。 指揮官 「では、作戦概要を改めて説明する!奴のいる島に住んでいた島民はすでに感染により全滅した。生き残った者はいない。 我々が到着する15分前に島に向けて爆撃を開始!着陸しやすいようにするのと生物兵器の数を減らすのが目的だ! 島の各地点から部隊を展開。北からはA、Bチーム計15名、西からはC、Dチーム計11名、東からはE、Fチーム計16名、南からはG、Hチーム計13名。尚、南には医療部隊とそれを守る傭兵部隊が駐留する。 しっかりと頼むぞ!! 島の周りには軍艦が23隻が囲んでおり、蟻一匹も通さない。何かあればそこからヘリを飛ばす事も可能だ! 虱潰しに研究所施設を探し、科学者ゲイリー・ブラウンを確保、又は排除せよ!!全員撤収後は島に向けて核の爆撃を開始する! 奴の研究全てを…完全に消し去るのだ!!!」 強い咆哮が辺りを木霊する。熱気が充満する。ヘリのとは違う激しい振動が伝わってくる。 全員が知った上で覚悟をしている。生物兵器の恐ろしさを。自分が死んでしまう可能性が高いということを。この作戦にどれほどの大きな意味があることを。 たとえこの先にどれほどの地獄が待っていようとも…この覚悟が鈍ることはないだろう。
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