百物語

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「何しろ一晩徹夜で語り明かそうという趣向だ。終わりに近いころにはみんな死ぬほど眠くなっている。実際寝落ちしちまって、自分の番になったらつつかれて起きるような奴も出始めている。しかも一人が20話もの話をするような状況だ。ダブっていたとしても気付く奴はいないだろう……いや、気付いたとしても、ここまできたらみんな早く終わらせたいから何も言わんだろうと……その人はそう考えたんだな」  再び安西が話し始めます。 「結局、彼は自分の最初の順番である3話目と同じ内容の話を、98話目で語ってしまった。そしてそのまま100話目まで語られて、一応完了となった。だが、事実上99話しか話されていないわけだから、当然何も起きるわけはない……」 「良かったねえ……」  馬場の含み笑いの混ざる声が、皮肉な口調でフォローします。 「でもさあ、それって、やっぱまずいよなあ。要はルール違反じゃん?」  安西の冷徹な声が暗闇の中に響きます。その途端、私の腋の下を冷たい汗が流れ始めました。 「そう。インチキだもんな。そんなインチキをするなんて、百物語の長い伝統を舐めてるとしか言いようがないぜ」  堂島の声が少し大きくなったように思います。  違う……インチキなんてそんなつもりじゃ…… 「そして他の参加者にも失礼だぜ。折角楽しみにしてたのに、まったくよ……」 「裏切りだよな」  そんなつもりじゃなくて……俺はやっぱりタブーを犯しちゃまずいんじゃないかと……そして一人で20話なんて話したことないから、ネタにも困ってたし……     
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